第4回「検事の暴言、市民ならどう考えるか」 録画導入を訴えた学者の期待

有料記事歪む「使命感」 ある重大事件の取調室の中で

聞き手・大滝哲彰
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 岸田文雄首相(当時)の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件の取り調べで、和歌山地検の検事(36)が、黙秘する木村隆二被告(25)に暴言を繰り返していたことが明らかになった。国の法制審議会で取り調べの録音・録画制度の導入を訴えた後藤昭・青山学院大名誉教授(刑事訴訟法)は、捜査する側に人格を尊重する発想が生じないのは必然だと指摘する。

    ◇

 ――「引きこもり」「捕まっても替えがきく」「かわいそうな人」といった検事の発言をどう感じますか。

 捜査官は権力を持ち、「犯人を処罰しなければいけない」という使命感と組織内のプレッシャーがある。そのような状態で被疑者(容疑者)を見下してしまうのは、人間の性質として不可避なのかもしれません。

 検察は「裁判員裁判の対象事件」と「検察の独自捜査事件」という2019年に義務づけられた範囲を超えて録画をしているようですが、録画に抵抗がなくなり、緊張感がなくなったことの表れでもあるでしょう。

 ――どうすればこのような取り調べを防げると考えますか。

 まずは被疑者の人格を尊重しなければいけないことを、組織はきちんと教えないといけない。大阪地検特捜部の検事が郵便不正事件で証拠を見立てに合うよう改ざんした反省から、検事総長が11年に掲げた「検察の理念」にも、そういうことは書いていなかった。

 ただ、精神論だけでは不十分です。

 そもそも法制度自体が、被疑者の人格を尊重するものになっていないことが問題です。

 例えば黙秘をする相手に取り…

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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2024年11月23日18時18分 投稿
    【視点】

     取り調べを担当する検察官が、被疑者に対して、「引きこもり」「捕まっても替えがきく」「かわいそうな人」などと侮辱的な発言をしても、それで供述がとれるとは思いません。被疑者が黙秘するならば、それはそのままにして、検察官は公判で証拠に基づいて有

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