「平成のピラミッド」地下通路はワイン貯蔵庫、夏でも冷涼「理想的」

富田祥広
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 ダムの地下通路で地元産のワインを熟成させる取り組みが、鳥取市で11月から始まった。年間を通して冷涼な温度が保たれる環境で7千本以上を数年間貯蔵する。新たな特産品の開発と地域の知名度アップをめざす試みだ。

 市中心部から車で約30分。同市国府町の殿地区にある「殿ダム」は2012年に完成した。土や岩石を積み上げて堤をつくるロックフィルダム形式のダムで、その見た目から「平成のピラミッド」と呼ばれ、市外からも観光客らが訪れる。

 ワインの貯蔵場所として利用するのは、ダムの地下約15メートルにある管理用の通路だ。地元のワイン醸造販売会社「兎(ト)ッ兎(ト)ワイナリー」と市が連携して取り組み、ダムを管理する国土交通省鳥取河川国道事務所が協力する。

 一般的にワインは瓶に詰めたあと、光が当たらず、気温が13~15度程度の環境で横向きにして保管するのが望ましいとされる。殿ダムの地下通路は夏場も含めて年間15度程度で、ワイナリーの前岡美華子代表は「理想的なワイン貯蔵庫」と話す。

 計画では11月から3年間を試行期間とし、1年に2400本ずつ、計7200本を貯蔵。熟成の度合いなどを毎年検証しながら、1~4年ほど熟成させる。専用のラベルを貼り、地域の新たな特産品として販売をめざす。

 ダム施設を活用することで、通常の貯蔵施設でワインの温度管理に必要な電力を抑えることもできる。11月20日にあったワインの搬入式で、深沢義彦市長は「省エネ、脱炭素、SDGsの取り組みにも合致する」とあいさつ。前岡代表は「美しい殿ダムの景色を思い起こすような、おいしいワインができると確信している。地域の魅力も発信できる」と話した。

 地元住民らでつくるまちづくり推進団体の山崎豪太郎会長(74)は「過疎化が進む地域にとって大変うれしい取り組み。ワインと共に殿ダムの名が広まり、地域が元気になれば」と期待する。

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この記事を書いた人
富田祥広
鳥取総局
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社会、ルポルタージュ