能登の仮設宿泊所、引き受けた支配人 大みそかに語る「理想は…」

能登半島地震

波絵理子
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 能登半島地震からまもなく1年となる、大みそか。

 石川県輪島市能登空港敷地内にある「仮設宿泊所」は、ひっそりとしていた。

 開設は2024年3月31日。主な利用者は、県庁や県外から応援に入る自治体職員。年末年始は帰省しているという。明かりのともる部屋はほとんどなかった。

 支配人を務める宮口元木さん(46)は地震があった元日、同市門前町の宿「能登・門前ファミリーイン ビュー・サンセット」でフロント担当として働いていた。

 すでに年度内の閉館が決まっていた施設。勤務中、激しい揺れに襲われ、宿泊客を机の下に避難させた。

 「地震が1月1日に来るなんて、思ってもいなかった」

 スタッフや客、宮口さんの家族にけがはなかった。半月ほど、ホテルの仕事や消防団の活動にあたりながら、ロビーで寝泊まりした。

 仮設宿泊所の支配人にと打診があったのは、3月中旬だった。急な話に驚いたが、「誰かがやらないと」と引き受けた。

 全てがドタバタで進み、鍵を受け取ったのは開業前日だった。

 コンテナハウス型など346人分288室を備える。奥能登はもともと宿泊施設が少ない上に、被災して休業する施設も多く、宿不足が課題となっていた。

 中長期滞在を想定した施設だが、昨年9月に能登北部を襲った豪雨後の1カ月間は河川や土木、電気関係の短期滞在者が多く、多忙を極めた。

 仮設宿泊所のスタッフは、地震で休業した輪島市内のホテルや民宿の従業員ら。今も多くが仮設住宅から通っているという。

 「地震について話したくないとか、夢に出てきたという人もいます」。そうしたスタッフで、復旧を支援する人たちの拠点を支えてきた。

 宮口さんはこの1年を振り返り、「あっという間だった。ここで働く人たちが本来働く宿やなりわいに戻り、早くこの施設がなくなることが理想」と話す。

 「そのために、活動してくれる支援者の方々に、少しでも快適に過ごして頂けるよう、来年も努めたい」

 日付が変われば、元日がくる。

 「明日は日が暮れるまでは緊張感をもって過ごそうと思っています」

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能登半島地震

能登半島地震

2024年1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る]