10月1日付異動で、5年半ぶりに政治取材に携わることになった。おかげで着任早々、政界の大きな変動を目の当たりにしている。直前に石破茂氏の自民党総裁選出があり、組閣、戦後最短期間での解散、総選挙、そして与党過半数割れ。「政界、一寸先は闇」と言われるが、ここまで目まぐるしく変わるとは思ってもいなかった。
少数になった与党は、政権を維持して政策を進めるために、野党の協力を仰がざるをえなくなった。国民民主党が政策のキャスティングボートを握り、与党に要望を突きつけて「103万円の壁」引き上げの実現を図るなど、政策の決定過程でも、新たな風景が生まれている。
表で協議の場が設定され、自民・公明、国民民主双方による説明があるため、透明性は一定程度は高まった。ただ現段階では、本質的な部分で政策決定プロセスに変化が生じているようには見えない。国民民主はあくまで、実現してほしい政策を要望として与党側に伝えるだけで、どう取り込んで実現するかは従来の与党の決定過程で判断する形をとっている。本格的に政策内容を詰めていくのはこれからで、今後の進め方や決定の仕方によっては、過程が見えにくい決着になる可能性も十分ありうる。
そもそも、局面を打開する策の一つとして取りざたされる来夏の衆参同日選などで、仮に再び与党が過半数を回復し、少数与党状態が解消されることになれば、与党側に野党の要望を聞き入れる理由は数字上はなくなり、1年もたたずに政策決定過程は元に戻ることになりかねない。
選挙の結果、30年ぶりに生じた少数与党という状況が、政治に本質的な変化を何も生まずに元に戻る。それはあまりにもったいないのではないか。石破首相も口にする、野党の意見も丁寧に聞き、議論を経て幅広い合意形成をめざすことは、政治の本来の姿であり、少数与党が苦境を乗り切るための方策ではないはずだ。この状況を、少しでもよりよい政策決定過程の実現につなげる模索が関係者には求められている。
高い透明性を確保し、科学的な分析や評価を行い、効率的な意思決定で、関係者の合意を丁寧に形成する。そんな政策決定過程の確立は、高望みだろうか。
「政治とは、情熱と判断力の…