人間のままでいるために ハン・ガンさん受賞講演、問いの中で生きる

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守真弓
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 「世界はどうしてこんなに暴力的で苦しいのか」「同時に、世界はどうしてこんなに美しいのか」――。今年のノーベル文学賞に決まった韓国の作家、ハン・ガンさん(54)が7日夕(日本時間8日未明)、ストックホルムで受賞記念講演を行い、自身を執筆に駆り立ててきた「動力」は「この二つの問いの間の緊張と内的な闘争」だったと語った。

言語の糸でつながる命

 「愛ってなんだろう? 私たちの胸と胸を結んでくれる金の糸だよ」

 「光と糸」と題した講演で、ハン・ガンさんは8歳の時に書いたこんな詩を起点とする、自身の文学的な歩みを振り返った。

 ハンさんは1970年、韓国南西部の光州で生まれた。家族と共に光州から引っ越してまもない80年、戒厳令下で光州事件が起き、民主化を求める市民や学生が武力弾圧された。

 12歳の時、起きた出来事を証拠として残すために秘密裏に制作された「光州アルバム」という冊子を、大人たちに内緒で読んだという。殺害された人々の写真とともに、献血のために大学病院に並ぶ人々の写真もあり、「人間は人間にこんな行動をするのか」という疑問が刻み込まれた。

 「人間に対する根源的な信頼を失ったが、どうしたら世界を抱きしめることができるのか。その不可能な謎に向き合わなければ前に進めない」と、書き始めたのが、代表作の一つで光州事件をテーマとした「少年が来る」(2014年)だった。

記事後半では、「少年が来る」邦訳者に講演を評してもらいました。

 肉食を拒否し、日に日にやせ…

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守真弓
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