崩れたクリスマスケーキから1年 今年も同じチームで 高島屋の思い

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山田暢史
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 昨年のクリスマス、大手百貨店高島屋がネットで販売した冷凍ケーキが崩れた状態で届いた。返金対応は1100件に上り、「特定は不可能」と原因もはっきりしない。ただ、今年も同じ監修シェフや製造工場らのチームで、商戦に挑んだ。そこには苦境を経験したからこその思いがあった。

 昨年のケーキは税込み5400円で、2879個が売れ、クリスマスまでに冷凍状態で届けたが、SNSでは「ぐちゃぐちゃに崩れていた」などのコメントが相次いだ。同社はケーキの温度管理や配送状況などを調べたほか、外部機関でのケーキの振動・強度実験を追加で行ったが、原因の明確な特定には至らなかった。

 そして迎えた今年のクリスマスシーズン。高島屋は昨年と同じく、横浜市フランス料理店「レ・サンス」が監修し、埼玉県羽生市の菓子メーカー「ウィンズ・アーク」が製造したケーキを販売した。昨年の経験があったからこそ、信頼回復に向けた再発防止策を行えるという決断だったという。

 今年のケーキは下段に土台となるスポンジケーキを置き、安定性を高めた。試験では問題なかったが、万全を期すために冷凍期間を昨年の20時間以上から2週間に延ばした。台座を固定する留め金も増やし、内箱の中でケーキが動かないようにしっかり梱包(こんぽう)した。

 「レ・サンス」の渡辺健善オーナーシェフによると、昨年の騒動後に、全国から多くの手紙やメールがあったが、大半が応援や励まし、ケーキをまた食べたいという期待の声だったという。「本当に勇気づけられた。その声があったからこそ、もっといいものを作りたいという気持ちや、期待に応えたいという思いが強くなり、今年のケーキの販売につながった」とコメントした。

千個が完売、「今年こそは笑顔で」

 10月から販売した「フレー…

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この記事を書いた人
山田暢史
東京社会部|メディア担当
専門・関心分野
農林水産業、食、武道、災害
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    小西美穂
    (関西学院大学総合政策学部特別客員教授)
    2024年12月23日16時24分 投稿
    【視点】

    高島屋のクリスマスケーキ対応を見て、過去にSNSで炎上した“スカスカおせち”を思い出しました。当時は企業の誠実さが問われた事例でしたが、今回の高島屋はトラブルへの迅速な対応と顧客の声を活かす姿勢で信頼を回復し、完売につながったのが印象的です。SNSで消費者の声がすぐに広がる時代。企業にとってはリスクがある一方で、スタッフの誠実な取り組みや努力、ストーリーが共感を呼べば大きな支持につながる可能性をあらためて感じました。

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2024年12月23日12時19分 投稿
    【提案】

    ■崩れたケーキもちゃんと美味しい 謝罪社会からの脱却を  いい加減にしなさいよ。今に痛い目にあうわよ。ケーキは、崩れても、食べられるじゃないの。だいたい、ケーキ屋さんから食べる現場に運ぶときにやらかすことだってあるじゃないの。そもそも、ケー

    …続きを読む