「蒸留所」を訪ねると…日本のウイスキー「世界からそっぽ」の恐れも

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福岡龍一郎
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 「酒造会社の社員」を名乗る男性が、兵庫県丹波(たんば)市の酒店を突然訪れたのは、2023年11月のことだった。

 「丹波でウイスキーをつくった。ぜひ店に置いてほしい」。男性は丁寧な口調で言った。

 対応した店員から、そう話を聞いた店主の男性(55)は、「ウイスキーなんて、うれしいなあ」。

 市内で長く店を構え、地元でつくられた日本酒なら置いてきたが、地元産のウイスキーを扱ったことはなかったのだ。

 ただ、すこし違和感を覚えた。地元には知り合いが多い。ウイスキーがつくられるのなら事前に耳に入りそうなものだが、寝耳に水だった。

 酒造会社のホームページをみると、市内の住所が書いてあった。店から車で20分ほどの場所だった。

 行ってみて驚いた。

 住宅の立ち並ぶ一角に、古びた倉庫のような建物。シャッターは閉まり、人の気配もない。古びた電気メーターをみると、動いていないようだった。

 本当にここでウイスキーをつくっているのだろうか。

 ホームページに書かれていた番号に電話をかけた。

 会社側は最初、「丹波市でウイスキーづくりをしている」と説明した。ところが、現場を訪ねたことを告げると、「工場の移転先を探している」「今は見学できない。忙しくてこれからも見学を受け入れる予定はない」などと説明は二転三転した。最後は「もうあなたの店に置いてもらわないでいい」と、いら立ったような口調で一方的に電話を切られたという。

 隣の兵庫県丹波篠山市では、酒造メーカー「黄桜」(京都市)が18年からウイスキーをつくり、「丹波」(参考小売価格税抜き9千円)と名付けて販売している。一方、冒頭の「酒造会社の社員」が置くよう頼んだウイスキーも名前は同じだが、兵庫県内での限定販売で、ホームページによると希望小売価格は税抜き1800円。ウイスキーのラベルには、製造所や会社本社として、酒店の店主が訪れたのと同じ住所が記されている。

 2024年の9月中旬、10月下旬、12月下旬の計3回、記者もここを訪ねてみた。

 現地では、周辺の住民からさまざまな目撃情報が…。近年、ウイスキーの産地や表記をめぐる問題が広がっていると業界関係者は口をそろえます。記事の後半では、世界的に人気の高まっている「ジャパニーズウイスキー」の、「世界からそっぽを向かれかねない」という状況をお伝えします。

 いずれの時もシャッターは閉…

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