捜査員が「捏造」と発言した事件の裁判、12月に判決へ 背景に何が
軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして「大川原化工機」(横浜市)の社長らが逮捕、起訴され、後に起訴が取り消された事件で、社長らが国と東京都に賠償を求めた民事訴訟が15日、結審した。訴訟の証人尋問では、捜査を担当した警視庁の現職警察官が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言。事件の異例な経緯が改めて浮かんだ。判決は12月27日に言い渡される。
「捏造ですね」
6月、東京地裁。警視庁公安部の警部補は、原告側の代理人弁護士から「(事件を)でっち上げたと言われても仕方ないのでは」と問われ、こう答えた。
逮捕に踏み切った背景について、警部補は「捜査員の個人的な欲でそうなった」「定年も視野に入ると自分がどこまで上がれるかを考えるようになる」とも証言した。現役の警察官が自らが携わった捜査に関してこういった発言をするのは極めて異例だ。
争点は規制要件の「解釈」、公安部の「実験」
この訴訟は、軍事転用可能な噴霧乾燥機を無許可で輸出したとして外為法違反容疑で社長ら3人を逮捕・起訴された大川原化工機側が、警視庁や東京地検の捜査の違法性を問うたものだ。
訴訟の争点は大きく二つある。
一つは省令の解釈。噴霧乾燥機の輸出を規制する要件の一つの「定置した状態で内部の滅菌または殺菌ができるもの」は、定義があいまいで経済産業省も明確な解釈を有していなかったため、公安部は有識者から聴取を行い解釈を打ち立てた。原告側は、それらをもとに打ち立てた公安部の解釈は誤りで、立件に不都合な情報を排除したと訴える。
二つ目は公安部が実施した実験だ。原告側は、大川原化工機の従業員らへの聴取などから、同社の噴霧乾燥機が規制に該当することを証明するには不十分と知っていたにもかかわらず、追加の実験を行うなどの適切な捜査を怠ったと主張する。
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発端は捜査員が出た講習会だった
何があったのか。裁判で出た資料や証言から事件をたどる。
事件の端緒は2017年3月…