「まさか」の退陣表明の耐えがたい軽さ 土の匂いのしない政治家たち

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小村田義之
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 岸田文雄首相の突然の記者会見には、正直いって驚いた。このコラムも実は、岸田氏への「退陣勧告」を書こうと思っていたのだが、あっさり先回りされたのだから、向こうが一枚上手(うわて)だった。こうして書き換える羽目になり、古手の政治記者として不明を恥じるほかない。

 退陣不可避と考えたのには理由がある。第一に、岸田氏が続投すれば、衆院選で「自民党は70議席減」との見方があった。自民は190議席前後になる数字である。公明党と合わせても衆院過半数の233議席には遠く及ばず、選挙後の引責辞任は必至だ。

 第二に、9月の総裁選の「勝ち筋」が見えなかった。現役の首相で総裁選に出て敗れたのは、「天の声にも変な声がある」という敗戦の弁を残した福田赳夫総裁だけ。今回、候補者の乱立が予想されるなか、裏金問題の責任もとらずに9月の総裁選に出るのは無謀だ。

 「お盆には進退の表明はしない」といううわさもあって、まさかあのタイミングとは思わなかった。帰省して墓参りをしていたのだから、甘かった。

 岸田氏は正体の見えないところがある。「聞く力」はどこへやら、唐突に「決める力」を発揮するので、まわりは右往左往させられる。

 私の頭にあったのは、ネットでは有名な二つの話である。

 ひとつは昨年3月、岸田氏が…

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この記事を書いた人
小村田義之
政治部|外交防衛担当キャップ
専門・関心分野
政治、外交安保、メディア、インタビュー