本書は、「世界一貧しい大統領」として有名だったウルグアイのホセ・ムヒカ氏(大統領在任2010年~2015年)が、2012年にリオデジャネイロで行われた環境問題に関する国連の会議で行ったスピーチを記録した絵本?です。

 彼は、大統領としての給料などの大部分を貧しい人たちのために寄付し、公邸に住まずに自宅の農家で質素な暮らしを続けていました。

 本書は、子供に読ませることを目指してか、文体も易しく、30ページほどなので、10分あれば読むことができます。

 

 本書を読んで、私は老子や仏教の経典などに出てくる有名な言葉「足るを知る」を思い浮かべました。

 ムヒカ氏は、インドなどの発展途上国の人々が西洋社会と同じような消費行動をとるようになるとした場合、そんな大量の資源が地球にあるのか各国代表に問いかけ、少ない物で満足して、家族や友人と楽しく暮らす「幸福」への生き方の転換を呼びかけました。

 

 「人より豊かになるために、情け容赦のない競争を繰り広げる世界にいながら、「心を一つに、みんな一緒に」などという話ができるのでしょうか。家族や友人や他人を思いやる気持ちは、どこへ行ってしまったのでしょうか。」

 「目の前にある危機は、地球環境の危機ではなく、私たちの生き方の危機です。人間は、今や自分たちが生きるために作った仕組みをうまく使いこなすことができず、むしろその仕組みによって危機に陥ったのです。」

 「人生は短く、あっという間です。そして、命よりも大事なものはありません。命は基本的なものです。しかし、必要以上にものを手に入れようと働きづめに働いたために、早々に命が尽きてしまったら・・・?」

 「『貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、限りなく多くを必要とし、もっともっと欲しがることである。』(エピクロスなどの言葉)この言葉は、人間にとって何が大切かを教えています。」

 「水不足や環境の悪化が、今ある危機の原因ではないのです。本当の原因は、私たちが目指してきた幸せの中身にあるのです。見直さなくてはならないものは、私たち自身の生き方なのです。」

 

 短い文章ですが、考えさせられるところの多いものでした。

 このスピーチは世界に感動を与えましたが、残念ながら、世界は依然として物質至上主義がはびこっています。

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