アコースティックギターでビートルズやサイモン&ガーファンクルあたりを弾いたりして遊んでいる、そんな方に出会った。それは職場の同僚で自分に仕事を教えてくれた方でもあった。何がきっかけでそんな話を聞いたのかは覚えていない。僕は下手だけどベースを弾くのでアコースティックギターと合わせることは出来ますよ、そう自分を売り込んだ。
話はトントン拍子で進み、ではこれやってみようとなる。ビートルズは自分はロック道の中で偶然か意図的にか、通っていなかった。しかしその曲は避けてきた彼らのナンバーでもさすがに知っていた。県庁のある街のカフェで待ち合わせた。そこはジャンルを問わずに音楽好きな人々が集う。そんなところでやってみようとなった。アンプは通せないので楽器だけで音が出せるものとして、アコースティックベースを手に入れた。ぱっと見はアコースティックギターだがネックは長く弦も太いのが四本。木の箱のボディなので箱鳴りの音が楽しい。
彼とのビートルズは楽しかった。ボーカルがいないのだから苦戦は最初から分かっていたがとにかく年の離れた友と音楽がやれることが嬉しかった。もともと音楽とはそんなもの。上手い下手ではなく楽しめればよいのだ。どこかで技術論などのつまらない話が出てくるけど、もっと素朴なはずだ。久しぶりにギターを触ったふうな彼と、また何かやってみよう、そう話してその日は終えた。楽しい一日だった。職場の彼とは違う顔だった。それも良かった。
アコースティックベースを手に入れたのはそんなセッションだけの理由ではない。今演っているバンドもだんだんとアコースティック寄りで、ルーツに近い音に変わってきた。もうこれならアコースティックベースが似合いそうだな。ルックスとしても音としても。
そんな理由で入手した。アンプにつながなくても出音で楽しめる。ピエゾ式のピックアップも付いているのでもちろんアンプにも繋がる。どちらでも楽しめる。
渋谷でバンドのリハがあった。山梨から楽器を担いで行くのも本番の時だけと思っていたが、こいつをデカいアンプに繋ぎたくなった。実戦向きかどうか。
スタジオのアンプはアンペッグだった。こいつが一番。やはり真空管が嬉しい。アコースティックらしい軟らかい音が出た。慣れたプレシジョンベースのいなたい音とも違う。メンバーからもやはり音が柔らかいね、と、言われた。親指で弾くと尚丸くなる。僕はそれを入手して弾いているだけなのに、なぜか嬉しい。
バンドのナンバーはアコースティックものとエレクトリックものが混在する。すべてをこれでやるか、とも思うが自分の好きなあのサンバーストのプレベはどうする?確かにあの音は唯一無二なのだ。
ライブはまだ先の話。しかしこれから練習は増える。次はこれだけでやるか。たぶんどちらも使うか。二本持っていくのは重たいけれどその喜びはつらさをいっとき忘れさせてくれるだろう。