日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

ガンバレ某社

日本にはかつて家電からコンピュータ、発電所、機関車から防衛機器まで作っているメーカーがあった。総合電機メーカーと言われていた。かつてと書いたのは今はもう往時の形は残っていないからだ。唯一ブランド名は残っているがもう個々の事業は別の会社に分割されあるいは売却されている。日本の大手二社の自動車メーカーの経営統合も言われるくらいだから産業界に何が起きても不思議もない。もっともそんな会社の中には不正会計や隠ぺいなどで内部から崩壊していった会社もある。原因は何にせよ栄枯盛衰という言葉は平家物語の時代だけでもないだろう。

自分が35年間務めた会社もそんな中の一つだった。正確には別上場のグループ会社だったがブランドは同じだった。入社してからやはり事業統合、売却など多くの経過を経ていた。見慣れた赤いロゴを印刷した封筒が数か月前に我が家に届いた。とうに退社している。健康保険組合からも脱会した。持株会も縁を切った。今更何の用事があるのだろう。

お詫びの手紙だった。クラウドサービスにハッキングがあり不正アクセスされたという。在職当時の個人データの漏洩リスクがあるという。なんということだろう。尤もそんな情報など今更漏れてもどうとも思わぬが、大丈夫なのかと思った。

一応は愛社精神、いや、ブランドを大切に思っていたのだろうか。我が家の家電には自分が勤めていた会社のブランドが付いているものが多い。テレビ、洗濯機、エアコン、炊飯器、掃除機…。何かを買うときは今でも無意識にそんなロゴの商品をまずは見ていた。しかし実態は家電部門はロゴは往事のものだが、すでに事業分割されて久しい。家電製品で今でも日本メーカーに拘る人は居るのだろうか。

年末の洗濯で洗濯機の底から漏れた。溢れるように漏れたものは個人データではなく水だった。床一面が池となりパニックとなった。何とか排水したが二度目は怖かった。今日も電源を入れたがやはり水が漏れた。12年使っていた。仕方ないと量販店に行った。

さがとは怖いもので無意識にあのブランドを探した。ドラム式、縦型全自動式、懐かしい二層式。白から明るい色の商品が並んでいる。白物家電とはまことにその通りのネーミングだと思う。その中であのブランドを見つけた。しかしなぜか値札が無いのだった。売り切れですか?そう店員さんに聞いた。するとこんな返事だった。「故障返品が多いので在庫はありますが積極的に売っていないのです」と。全く愕然とした。品質は日本メーカーのこだわりだった。しっかりした設計、幾多にもすり合わせられた高度な技術。効率性と品質維持を両立した製造と品質管理。これらを除いたら何が残るのだろう。そういえばこの秋にエアコンを購入した際にも店員さんは一言もあのブランドの商品を勧めなかった。壁には掛かっているのに。それもまた故障が多いのだろうか。

大丈夫かな○○?ガンバレ○○、そう口にした。さすがにもう不正会計はないだろう。不正アクセスは防げないかもしれない。しかし品質は違う。販売店が嫌気を刺すほどに故障が多いのか。自分がここまで生活をしてきたのはそんな会社のお陰ではあった。まだまだ多くの社員がいるではないか。頑張れ○○、再び繰り返すのだった。

彼は鉄道が好き。電車でも機関車でも音がすれば線路に駆け寄る。タンク車をつないだ電気機関車が坂を上ってきた。機関車の側面にはあの見慣れたロゴがあるだろう。どうぞ品質問題を起こさずに。頑張れ○○と口にした。

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