高3カップル、2人きりの自宅 震える彼女に手をかけた

有料記事きょうも傍聴席にいます。

北沢拓也
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きょうも傍聴席にいます

 「私、もう死んじゃいたい。お願い、死なせて」。交際相手の少女からこう頼まれ、少年は彼女の首に回した右腕に力を入れた。1年近く付き合った高校3年生のカップルの間に何があったのか――。

     ◇

 昨年5月4日、東京都台東区マンションの一室で火災があり、この部屋に住む高校3年の女子生徒(当時17)が遺体で発見された。女子生徒から頼まれて殺害したうえ、部屋に火をつけたとして、嘱託殺人や現住建造物等放火などの罪で起訴されたのは、交際していた同級生の少年(当時18)だった。

 今年8月29日、東京地裁裁判員裁判の初公判が開かれた。少年は紺色のポロシャツに灰色のズボン姿。丸刈りが少し伸びたような短髪。身長182センチのがっしりとした体格から、事件当時、バスケットボール部の部長で、剣道部も掛け持ちしていたという一端が垣間見えた。ただ、被告が未成年であることを踏まえ、傍聴席と被告人席の間には仕切りが置かれたため、傍聴人から見えるのは証言台に立った時の後ろ姿だけで、表情を伺うことはできなかった。

 起訴状によると、少年は女子生徒に殺害を頼まれ、首を腕で絞めて殺害。翌朝、ライターで女子生徒にかかっていた布団に火をつけ、遺体や部屋の一部を焼いた。

 検察官が読み上げた起訴内容について、少年は「間違いありません」と認めた。

 検察側の冒頭陳述や、被告人質問などをもとに、2人の関係や事件の経緯をたどる。

 少年が女子生徒と出会ったのは高校の剣道部。悩み相談を受けたのをきっかけに親しくなり、高校2年の夏に付き合い始めた。

 平日はほぼ毎日会った。部活の後、彼女の門限まで一緒に過ごし、自宅マンションの下まで送った。電話も毎晩のようにした。彼女の家族とも、時々一緒に食事をした。

 そんな中、事件は起きた。

 大型連休中だった昨年5月3日、2人は昼前に東京・錦糸町で待ち合わせてデートをした。映画をみて、ネットカフェで2時間ほど過ごした後、少年は、彼女を自宅まで送った。しかし、彼女の様子がいつもと違うことが気になっていた。「笑い方がぎこちなく、会話がかみ合わなかった」と少年は振り返った。

 少年は夜になって、再び彼女の自宅に向かった。彼女の家族が泊まりがけで家を空けていたことは知っていて、驚かせようとベランダによじ登って部屋に入った。びっくりしてくれたが、「なんで来たの?」と冷たくあしらわれたという。

 彼女は母親の部屋に移り、横になった。少年も隣に寝そべると、彼女は少年の手を握り、泣きながら震えだした。

 少年が被告人質問で説明した…

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