【動画】古いレコード盤から流れた懐かしい声。兄は人間魚雷「回天」の特攻隊員だった=上田幸一撮影
モノ語る【5】
母の遺品にあった1枚の古びたレコード。そこに残されていたのは、太平洋に散った亡き兄の声だった。
押し入れのトランクの中から見つかったレコード盤。そっと針を落とすと、懐かしい声が流れ始めた。
「父よ、母よ、弟よ、妹よ。そして長い間育んでくれた町よ、学校よ、さようなら。本当にありがとう」
塚本悠策さん(84)=千葉県松戸市=が東京・田端で暮らしていた母親の遺品を整理していた、40年ほど前のことだ。「二度と聞くことはできないと思っていたのに……」。声の主は兄の太郎さん。21歳で西太平洋に散り、遺体すら見つからなかった。
【動画】戦後74年。思いを託された「モノ」をめぐる、人々の物語=西田堅一、上田幸一撮影
「弟がいますから」書いていた血書
太郎さんは慶応大生だった1…