夜尿症・尿路疾患・水腎症…子どもの泌尿器科疾患とは

弘前大学医学部附属病院講師 山本勇人
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 泌尿器科で診る小児の病気としては主に、尿の通り道である尿路(腎臓・尿管・膀胱(ぼうこう)・尿道)系の病気と、生殖器(男児では精巣・陰茎、女児では外陰部など)の病気の二つがあります。多くは生まれつきの病気です。子どもの病気は成長に伴って自然に良くなるものもありますが、放っておくと徐々に悪化するものもあるため、専門的な判断が必要です。今回は泌尿器科で扱う子どもの病気について説明します。

 【停留精巣】

 男児の精巣は通常、出生までにおなかの中から鼠径(そけい)部を通って陰囊(いんのう)に下降します。出生時に精巣が陰囊内へ下降していない状態を停留精巣といい、男児の約3%に認められます。

 生後6カ月までは自然下降が期待できますが、下降していない状態で長く放置してしまうと、将来、不妊症になったり悪性腫瘍(しゅよう)が発生したりする可能性があります。自然下降がなければ1歳前後に精巣を陰囊内に固定する手術を行うのが一般的です。

 【膀胱尿管逆流症】

 腎臓で作られた尿は尿管から膀胱へとたどり着きます。通常は膀胱内に入った尿が尿管や腎盂(じんう)へ逆流することはありませんが、様々な原因で逆流することがあり、この現象を膀胱尿管逆流といいます。逆流すると、発熱や背中の痛みを伴う腎盂腎炎という尿路感染症の危険性が高くなり、腎障害を引き起こすことがあります。多くは先天的に膀胱と尿管のつなぎ目が十分に閉じきれず、膀胱から尿管へ尿が逆流するために起こります。また、尿道が閉塞(へいそく)する病気によって起こることもあります。

 治療法は、検査で逆流症の原因・程度、腎障害の有無を確かめた上で決定します。尿管膀胱移行部の異常であれば成長とともに自然治癒することがあるため、尿路感染症が起きているかどうか経過を観察します。すでに重い腎障害がある場合や、尿路感染症を繰り返して自然治癒が認められない場合には手術が必要となります。

 【閉塞性尿路疾患=先天性水腎症、巨大尿管症、後部尿道弁】

 尿路に狭い場所がある病気を閉塞性尿路疾患と言います。子どもで狭くなりやすい場所と病名は次の通りです。

 先天性水腎症(腎盂尿管移行部狭窄(きょうさく)症)=先天的に腎臓と尿管のつなぎ目が狭いため、尿で腎臓が腫れる水腎症になっている状態。

 巨大尿管症=先天的に尿管と膀胱のつなぎ目が狭いため、腎臓と尿管が太く拡張している状態。

 後部尿道弁=先天的に膀胱近くの尿道に弁があり、尿道が狭くなっている状態。

 いずれも尿路に尿がたまりやすい状態のため、尿に細菌が定着しやすくなり、通常より尿路感染症や腎障害のリスクが高くなります。後部尿道弁は腎と膀胱にも影響を与えるため、腎不全となっていることもあり、早急な治療が必要です。先天性水腎症や巨大尿管症は腎機能が正常で成長に伴い自然に治るお子さんも多いです。定期的に検査を行い、腎障害の兆候や腹痛や発熱などの症状があった場合にその時点で手術をすることが多いです。

 【夜尿症】

 なかなか“おねしょ”が治らないお子さんも珍しくはありません。夜尿症は「5歳を過ぎて1カ月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3カ月以上続くもの」と定義されます。7歳児の約10%に夜尿症がみられ、夜尿症患者全体の数%は夜尿が解消しないまま成人に移行すると言われています。

 夜尿症には膀胱や尿道の疾患が隠れていることがあり、診断した上で必要に応じて治療を開始します。生活指導や、夜間に下着に装着した尿取りパッドがぬれると鳴るアラームを装着するアラーム療法、夜間の尿量を減少させる薬物療法などを行います。

 その他、外性器の形態異常(男児の尿道が亀頭部先端まで届かずその手前で出口が開いてしまう尿道下裂や、女児の小陰唇が後天的に癒着してしまう陰唇癒合など)や腎、尿路、精巣の悪性腫瘍などの病気もあります。お子さんで気になる症状がある方は泌尿器科にご相談ください。

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