第5回湾岸危機、日米首脳の思惑に迫る 元外務省北米局長と読み解く会談録
編集委員・藤田直央
作成からの「30年ルール」で2021年12月に公開された外交文書。対象となる1990年前後は、冷戦終結から湾岸危機に至る激動期だった。文書に含まれる日米間の三つの重要な会談録を、当時外務省北米局長だった松浦晃一郎・元ユネスコ事務局長と読みながら、当時を振り返る。
1990年3月初めの会談 貿易摩擦、話できなかった海部首相
○1990年3月初めの日米首脳会談(冷戦終結から3カ月後、イラクのクウェート侵攻による湾岸危機発生の5カ月前)
――松浦さんが北米局長になって1カ月と少しの当時、米西部の保養地パームスプリングスで日米首脳会談が開かれます。ブッシュ(父)大統領の意向で慌ただしくセットされた様子が会談録にあります。
そうそう。2月中旬の衆院選で自民党が政権を維持した数日後、改めて国会で首相に指名される前の海部(俊樹)さんにブッシュから急に電話がかかってきてね。冷戦が終わり、これから日米のグローバルパートナーシップをどうもっていくかという大きな話かと思っていた。
――ところがブッシュ氏のこ…