こどもホスピス実現へ、あきる野にドリームルーム

杉山圭子
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 重い病気の子や家族を支える「こどもホスピス」を東京都内につくることをめざすNPO法人「東京こどもホスピスプロジェクト」が、建設が実現するまでの間、同じ趣旨の役割を担う「こどもホスピスルーム」をあきる野市の医療機関内に開設した。15日、開設イベントがあり、難病の子らが訪れて家族でひとときを過ごした。

 同ルームができたのは、JR武蔵五日市駅から徒歩約5分の「あきるの杜(もり)きずなクリニック」内。NPO法人代表理事の佐藤良絵さん(48)が計画し、場所を探していたところ、同クリニックの小高(こだか)哲郎院長(50)が協力を申し出た。小高院長は小児外科が専門で小児がんの診療にも携わってきた。「すべての子を救うことはできないけれど、笑顔にすることはできる。これまでに携わった子どもたちも、今回の取り組みを応援してくれている気がして決めました」と語る。

 クリニック1階奥の一室を「ドリームルーム」と名づけ、21日から毎週金曜日(5週目は休み)の午後2~3時、社会福祉士や保育士らの専門スタッフが待機して難病の子らを迎える。利用は原則予約制。「遠足に行きたいとか、かけ算ができるようになりたいとか、それぞれの子に10の夢を挙げてもらい、ご家族と相談しながら夢をかなえるサポートをしていきます」と佐藤さん。

 市内に住み、両親と訪れた北村日織(ひおり)さん(6)は急性脳症で車いす生活を送る。部屋を見学した母親の梨沙さん(36)は「特別扱いされることなく地域に溶け込める場所があれば、と願ってきた。ここに来ればいろんな人とつながることもできそうで、ぜひ利用したいです」と話した。

 普段は予防接種の待合室などとして使われているという室内は、天井や上部の壁に青空が描かれ、「明るい雰囲気がいい」と訪れた人は口をそろえていた。

 ただし、開設が決まっているのは現時点で3月末まで。以降は人件費を含めた資金調達のめどがまだつかず、同法人ではクラウドファンディングによる寄付金の募集を続けている。

 佐藤さんは2017年7月に当時19歳だった長男を骨肉腫で亡くした。「『こどもホスピス』の存在を知っていたら、もっと充実した日々を送れたはず」。強い後悔の念から、20年6月にNPO法人を立ち上げた。欧米で広く普及している「こどもホスピス」は医療機関から独立した「第二の家」ともいえる施設。だが日本では医療、福祉のどちらの枠組みからも外れて寄付金に頼るしかない現状があり、億単位の建設費を集めるのは至難の業だ。「息子や家族が経験したような孤独に苦しんでいる人が今も大勢いる。1日でも早く、一人でも多くの人に笑顔になってほしい、との思いで今回の計画を思いつきました」と佐藤さん。「こどもホスピスの建設が必要」との思いが変わることはもちろんない。

 寄付金募集の詳細などは法人のホームページに掲載している。問い合わせは事務局(042・546・3999)へ。同法人では、命に関わる病気の子どもや家族の相談窓口ダイヤル(070・2811・3918)も設けている。

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