欧米で増える子どもの肝炎、関連が疑われているアデノウイルスとは
英国を中心に16歳以下の子どもの急性肝炎の報告が相次いでいる。A~E型と5種類あるウイルス性肝炎には該当せず、現時点では原因不明とされている。国内でも25日、この「可能性例」に当てはまる1人の症例が発表された。報告が相次ぐ欧米を中心に原因究明が続いている。
アデノウイルスとの関連の可能性を指摘する声もある。ただ、今回の肝炎の報告とアデノウイルスとの関連はまだはっきりしていない。今後、さまざまな報告が出てくる可能性もあり、経過を慎重にみていく必要がある。
1割は肝移植必要
世界保健機関(WHO)によると、21日時点で英国やスペインなど欧州を中心とした計12カ国で、169人の小児の急性肝炎の患者が報告されている。少なくとも1人の死亡報告があった。
年齢は生後1カ月から16歳までで、1割にあたる17人が肝移植を必要としたという。症状は腹痛や下痢、嘔吐(おうと)など。ほとんどの症例で発熱はなかった。
ウイルスが原因となる肝炎として一般的なA~E型肝炎は否定されている。水や食べ物から感染するA型肝炎は、多くの子どもでは症状は軽い。
厚生労働省によると、急性肝炎は、食欲の低下、全身のだるさ、下痢、黄疸(おうだん)などがでる。肝炎はウイルス以外にもある。自己免疫性や薬の服用による肝炎も知られている。劇症肝炎になると、血漿(けっしょう)交換や肝移植などの治療が必要になる。
半数以上は5歳まで
英国は25日、詳細なリポートを公表している。1月から4月20日までに111人の患者が確認されている。そのうちイングランドで81人の患者がいて、53人(65%)が3~5歳だった。下痢や吐き気といった胃腸炎のような症状から始まり、74%で黄疸が報告されたという。
20日時点で、イングランドの81人の患者のうち、43人が回復し、38人が入院中か状況不明となっている。死者はいない。
いま注目されているのは、アデノウイルスだ。
英国では53人でアデノウイルスについて検査され、そのうち40人でアデノウイルスが検出された。血液中にアデノウイルスが検出された11人は全員が「アデノウイルス41型」と呼ばれるものだった。新型コロナウイルスは60人中10人で検出された。
WHOの報告でも、アデノウイルスが関与している可能性が指摘されている。世界で少なくとも74人でアデノウイルスを検出。18人は41型だった。
アデノウイルスは、2本鎖のDNAウイルスで、遺伝情報は比較的安定している。1本鎖RNAウイルスである新型コロナのように変異しやすいウイルスではないとされる。
アデノは通常、健康な人の肝炎の原因ではない
人に感染するアデノウイルス…