第1回顔見られず逝った母、密閉された遺体… 湯灌師がみた「別れ」の実情

有料記事政治とくらし

三宅梨紗子
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 ゆっくりと浴槽につからせ、足の指先から頭まで、シャンプーやボディーソープを使って丁寧に洗っていく。熱めの湯が好きだった人。おしゃれ好きで、ひげは伸ばしていた人。ほくろの毛がチャームポイントだった人。家族から聞き取った「その人らしさ」を大切に、旅支度をする。

 亡くなった人の体を洗い清める湯灌(ゆかん)。現世の疲れや苦しみを洗い流すという意味がある。赤ちゃんが生まれたときに産湯を使うように、湯灌をすることで来世でも生まれ変わるようにとの願いが込められている。

 家族の「別れ」に立ち会う湯灌師に話を聞くと、コロナ禍で変化した別れの実情が見えてくる。

ふだんあまり意識していなくても、私たちの生活と政治は切っても切り離せません。今回の企画「政治とくらし」では、市井のさまざまな人のくらしぶりを紹介しながら、その人と政治との接点や、参院選で問われる課題に目を向けます。

ようやくかなった「対面」

 今年のはじめ。肉が落ち、すっかりやせてしまった70代の母親の遺体と、約2年ぶりに再会した娘は、その変わりようを受け止めきれない様子だった。

 新型コロナウイルスに感染し…

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この記事を書いた人
三宅梨紗子
ネットワーク報道本部
専門・関心分野
福祉、多文化共生
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    仲村和代
    (朝日新聞社会部次長)
    2022年6月15日10時56分 投稿
    【視点】

     連日、新型コロナウイルスによる死者の数が報じられたこの2年あまり。「数字」を追っているだけでは見えないけれど、ひとりひとりの生と死があり、それを受け止める家族や身近な人たちがいたことを改めて感じさせてくれる記事です。   この間、様々な

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