安藤なつさん「ありがとう」が楽しい おせっかいの輪広げる介護
国際シンポジウム「朝日地球会議2022」(朝日新聞社主催)はオンラインで開催され、セッション「私らしい暮らしのために 新しい介護へ」を配信した。
私たちが前向きに生き続けるために、日々の暮らしを支える介護の役割がより重要になってきている。未来の介護について、お笑いコンビ・メイプル超合金の安藤なつさんと慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授の堀田聰子さんが語り合った。
「楽しさの肝はどこにある?」 安藤さんの答えは
まず安藤さんが、介護に関わるようになったきっかけを話した。おじの運営する障害者施設に、小学生のころ遊びに行くようになったのだという。「一緒におやつを食べるなど、楽しんでいましたね。大変ということはなかった」と安藤さん。
その後、中休みはあったが、お笑い芸人としてブレークする2015年まで、介護職を続けた。
堀田さんが「安藤さんの楽しさの肝はどこにあるのか?」と尋ねたところ、「やっぱり、『ありがとう』って言ってもらえることです。あと一緒になにかできるという達成感ですかね」と応じた。
その後、変わる健康観をテーマに「ポジティヴヘルス」という概念を、堀田さんが紹介。「身体の状態」や「心の状態」だけでなく、「社会とのつながり」や「いきがい」なども大切にする、という考え方だ。安藤さんに、「心」や「社会とのつながり」など6要素の状態を六角形のレーダーチャートで表したフリップ(ボード)に記入してもらったところ、「心」の部分がかなり落ち込んでいた。堀田さんが思い当たる理由がないか尋ねると、「先日、テレビで鬼滑りして、それを引きずっているんです」と笑いを誘った。
堀田さんは「数字が高いから良い、低いから悪い、というわけではない。書いてみて客観化し、どう感じるかが大事」と解説した。
そして「介護に関わる人を増やすには」に話題が移り、地域の中にいて健康的なまちづくりをする人材「コミュニティーナース」の動きについて、堀田さんがプレゼンした。
「これからの人口構造を考えると、介護をする人と受ける人、専門職と非専門職という枠組みではなくて、みんながお互いをケアしていけるということが大事。いわば、おせっかいの輪を広げていくこと」と説明した。安藤さんは「孤立しがちな世の中で、特に都会で、いろんな壁が低くなる」とコメントした。
さらに堀田さんは、専門職だと「このお年寄りは、疾病がどうだ」という関わり方になってしまうが、非専門職だと「コマの遊び方を教えてくれるおばあちゃん」みたいなとらえ方をできるのがメリットだと指摘。認知症などでも、その人の持ち味や強みが生きてくるのだという。
「みんなで遊ぼうよ。一度体験してみて」
介護の魅力を発信するには?との問いかけには、安藤さんが「想像だけで『大変だね』というのではなく、『みんなで遊ぼうよ。一度体験してみて』と呼びかけたい」と答えた。
最後に視聴者からの質問に答えた。「高齢者に優しい街、理想の街はどんな街?」との質問に、安藤さんは「爆音で大好きな音楽を鳴らして、変なおじさんたちと会話を楽しみたい。毎日がフェスみたいに」と話した。堀田さんは「先日、視覚障害の方が『星がみたい』と言っていた。それぞれのチャレンジをおもしろがっていけるといいと思う」と話した。
朝日地球会議2022の動画はこちらから
今年で7回目を迎えた「朝日地球会議」。「希望と行動が世界を変える」をメインテーマに10月16日から4日間配信しました。ご視聴ありがとうございました。主なプログラムのアーカイブ動画はこちらから