80歳以上の9割に症状 睡眠時無呼吸症候群を山梨大調査
80歳以上の9割が睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状がある――。介護認定のない高齢者32人を検査した山梨大学のチームが、そんな結果をまとめた。SASは加齢とともになりやすくなることは知られているが、80歳以上に限った研究は報告されておらず、「検査を普及させ、早期発見につなげることが必要」としている。
調査したのは山梨大先端応用医学講座の田中佑治特任准教授(42)らのチーム。全国上位にある山梨県の「健康長寿」をテーマに、同大で分野横断的に研究する「山梨健康長寿バイオバンク」を始めた。SASのほか、体脂肪率、握力、赤血球数など様々なデータを収集しており、その一環で介護認定のない高齢者が参加した。
SASは眠っている間、10秒以上の呼吸停止が繰り返される病気。昼間の眠気、疲れなど体に悪影響をもたらし、突然死や自動車事故のリスクが高まることが知られている。田中准教授らは、自宅でできる簡易式の腕時計型検査キットを高齢者に貸し出し、データをとった。
協力したのは83~95歳の32人。全員がSASの自覚はなく、治療経験もない。
1時間あたり10秒以上呼気が止まる回数が5回以上となるとSASとされるが、検査ではほぼ全員の30人(93%)が該当。さらに22人(68%)が1時間に15回以上という中等症以上で、治療が必要なレベルだった。
32人のほかの検査項目の数値と照合すると、1日の平均歩数が多い人の方がSASのリスクが低いという結果が出ている。今後、精度を高めるためにはさらに多くの高齢者のデータをとることが必要だという。
高齢者に関しては、国内の70代の3割程度がSASの可能性が高いという先行研究がある。しかし、80歳以上に限った研究報告は例がないという。
「人数は少ないが、9割超というのは驚きの数字。80歳を超えた人は、自分が思う以上にSASである確率が高いということです」と田中准教授は説明する。
田中准教授自身も、検査簡易キットのテストも兼ねて研究開始の前にデータをとったところ、まさかの「中等症以上のSAS」の診断。あわてて入院して検査を受け、退院後CPAP(シーパップ)と呼ばれる呼吸器で在宅治療を続けた。以前は寝起きに体が重かったり、仕事中に不意に眠気に襲われたりしたが、今は解消したという。
「高齢者の交通事故が多いのは、認知症のほかにSASによる居眠りなどの要因があるかもしれない。治療で改善する可能性があるので、まずは実態把握のためにも検査を普及させることが必要」と訴える。
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