第1回おかわりした給食のチヂミでアレルギー 親友の生死を分けた14分

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 「給食 アレルギー 事故」

 大学1年生の秋。自分の部屋で、緊張しながらそう打った。

 食品衛生を学ぶオンライン授業で、先生が発した一言がきっかけだった。

 「アレルギーは、亡くなることもあるので対策は重要です」

 和佳夏(わかな)さん(21)は思った。「読むなら今かも……」

 授業の後、またパソコンに向かった。

 検索したのは、あの時の事故の検証結果報告書。ずっと気になっていたけれど、どうしても読めずにいた。

 聞いていたことと違うことが書いてあったらどうしよう。思っていたことと違ったらどうしよう……。そう思い、怖かった。

 それでも、あの時一緒にいた自分が理解しておかないと、と心を決めた。

 報告書を開き、あの日なにがあったのかがわかってきた。そして「14分」が分かれ目だったことも初めて知った。

東京都調布市の小学校で2012年12月、食物アレルギーのある5年生の沙清(さきよ)さんが給食の後、アナフィラキシーショックで亡くなりました。20日で事故から10年。全国の学校で給食の安全対策が続けられていますが、新たな課題も見つかってきました。この連載では、11歳の沙清さんが遺(のこ)したものを、親友や家族、医師や学校関係者らへの取材でたどります。(全6回)

 10年前、東京都調布市の市立小学校の5年生の時だった。給食に「じゃがいもチヂミ」が出た。チーズ入りだったが、チーズの味はせず、油っぽく、なんだか酸っぱかったのを覚えている。

 担任の先生が「おかわりする人いない?」と呼びかけても誰も手を挙げない。

 それなのに、めったにおかわりをしない沙清ちゃんが手を挙げた。「え、もう1枚いく?」。不思議だった。

 「どうしておかわりしたの?…

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この記事を書いた人
貞国聖子
東京社会部次長|国交省、宮内庁担当
専門・関心分野
災害、事件事故、戦争と平和