団地育ちのホッキョクグマ、飼育員と23年「生きていることが奇跡」

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宮田裕介
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 「どうか神様、ピースをお守りください」

 愛媛県立とべ動物園(砥部町)の飼育員、高市敦広さん(52)は毎日、出勤時と帰宅前に胸の中でそうつぶやく。メスのホッキョクグマの無事を23年間、祈り続けてきた。

 「ピースがいま生きていること自体、奇跡です。だからこそ、ファンに囲まれて毎年誕生日を迎えられることはありがたい」

 祈る理由は、てんかんの持病があるからだ。3歳ごろに発症し、毎年のように発作を起こしてきた。意識を失い、けがをしたことも。今春にも起き、獣医師からは「一生治らないかもしれない」と言われている。

     ◇

 ピースは1999年12月2日に産まれた。

 メスの双子。しかし、初産だったピースの母は、うまく育児ができず、1頭を傷つけて死なせてしまう。

 残ったもう1頭がピースだった。園は、子育てを母親にまかせるのは難しいと判断、人工哺育に切り替えることにした。

 しかし、当時、国内でホッキョクグマを人工哺育で育てた例はほとんどなかった。日本動物園水族館協会にもはっきりした記録はない。

 手探りのなか、高市さんは680グラムの小さな命に誓った。「絶対に育ててやるからな」

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この記事を書いた人
宮田裕介
文化部|メディア担当
専門・関心分野
メディア、放送行政、NHK
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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2022年12月25日10時7分 投稿
    【視点】

    クリスマスらしい温かい記事にほっこり。写真を見ていても、ピースの幸せそうな様子が伝わってきます。「動物園で飼育される動物は、望んでいないのに限られた空間で生活をする。全部、人間の都合です」という高市さん。だからこそできる限り幸せになってほし

    …続きを読む