第2回歌手になった池畑慎之介の迷い 芸能界を去る覚悟で旅立った自由の地
《松本俊夫監督の映画「薔薇(ばら)の葬列」で世に出た1969年、歌手としてもデビューを果たす》
なかにし礼先生に作詞していただき、「夜と朝のあいだに」(作曲・村井邦彦)という曲を歌いました。お化粧したかわいらしい17歳が、とんでもなく低い声で歌い出す(笑)。当時、お茶の間で見ていた方たちが、テレビが故障したんじゃないかってバンバンたたいたって逸話が残っているぐらいです。
でも、10代のぶりっ子な恋歌ではなくて、大人びた曲だったからこそ、70歳の今でもライブで違和感なく歌えるんです。いい歌を作っていただいて感謝しています。
歌手で俳優の池畑慎之介さんが半生を振り返る連載「ピーター・イズ・ピーター」の全4回の2回目です。
実はこのタイトルに深い意味があるんです。フランス語で「夜」は女性名詞、「朝」は男性名詞。なかにし先生は「女と男の間に、という意味なんだぞ」と。夜明け前の何とも言えない紫色の空の下に、一人きりでいる少年というイメージで書いて下さったんですね。
秋にリリースされたら、いきなりオリコンチャートの上位になって。その年の日本レコード大賞の最優秀新人賞に選ばれました。ちょうどその年から、レコード大賞が大みそかに生放送されるようになったんです。会場の帝国劇場には、サプライズで鹿児島から母も駆けつけてくれて、思わず泣いてしまいました。
《当時はまだ男性が化粧するのは珍しく、雑誌などでは「女装歌手」と書かれることが多かった》
私、「女装」という言葉が大嫌い。ピーターパンのイメージで中性的な衣装を着ていたこともあるけれど、男性だろうと女性だろうと好きな格好をすればいいと思うんです。
恋愛もそう。好きになった人…