一足早く春の陽気となった2月18日、紀州和歌山で、強固な「王国」を築く自民党の二階俊博元幹事長(84)と、世耕弘成参院幹事長(60)が記者会見にのぞんだ。隣り合う2人は満面の笑みが浮かべていた。
「円満に一致団結し、門さんを自民党公認候補に擁立することを決めました」
前日に84歳になったばかりの和歌山県連会長・二階氏が、4月23日投開票の衆院和歌山1区補欠選挙の候補者が決まったことを発表すると、二回り若い県連会長代行・世耕氏が黙って頭を下げた。「かなり丁寧な段取りが取られた。これも二階会長のご指導のたまものだ」と持ち上げた。
補選は、元国民民主党議員だった岸本周平氏が、昨年11月に知事に転身したことにともなう。補選はおおかたの予想を覆す候補者に決まったが、この日の「円満会見」に至るまで二階、世耕両氏は、知事選での候補者擁立の時と同じように神経戦を繰り広げた。「先手」を打ったのは世耕氏だ。
真意みせぬ二階氏 詰め寄る世耕氏
2月10日朝、党本部の一室に二階氏と世耕氏、石田真敏元総務相の和歌山県選出国会議員3人が集った。
補選の候補者は門博文前衆院議員か、くら替え立候補になる鶴保庸介参院議員に絞られていた。地元では意見がまとまらず、3人の協議に委ねられた。
門氏は2012年から和歌山1区で岸本氏と戦ってきたが4連敗で、21年衆院選は比例区復活当選もかなわなかった。
一方で、自民の情勢調査結果は一貫して鶴保氏が優勢。補選には日本維新の会も擁立を検討していることもあり、勝てる候補として、二階氏の意中は鶴保氏との見方も強まっていた。
「鶴保さんが参院議員を辞めたら、補選までの間、欠員になります。参院自民として困ります」
世耕氏がそう言って門氏を推すべきだと述べ、石田氏も同調した。
鶴保氏は昨夏の参院選で5選を果たしたばかりだが、この参院選をめぐっては「一票の格差是正」の訴訟が起こされている。公職選挙法の規定で、判決確定までは欠員が出ても補選が行われないため、しばらく欠員のままになる可能性がある。参院は自民が過半数を割っている事情もあり、議員が減ることには懸念もあった。
「決めてください」と世耕氏…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら
統一地方選挙・衆参補選2023年
ニュースや連載、候補者など選挙情報を多角的にお伝えします。[もっと見る]