人類はどこで間違えたのか? 目指すべき社会とは 山極寿一さん
科学季評 山極寿一さん
先日、東京で第3回人文知応援大会「レジリエントな未来に向けて~人類の進化と歴史から学ぶ~」が開かれ、私は基調講演をさせていただいた。タイトルは「人類はどこで間違えたのか?」だ。
まず、「人類は進化の勝者」という考えが間違っていると私は思う。そもそも人類に最も近縁なアフリカの類人猿は、2千万年前から勢力を伸ばし始めたサルたちに押されて、種の数を減らしてきた劣勢の種だった。サルに比べて消化能力も繁殖能力も劣っていたからだ。乾燥地や平原に進出したサル類とは対照的に、類人猿は現在も熱帯雨林とその周辺にしか生息していない。一方、地球が寒冷化し始めた700万年前、人類の祖先は直立二足歩行を駆使して、熱帯雨林から徐々に草原へと進出を果たした。それは強かったからではなく、弱かったから縮小する森林にすみ続けることができなかったのだ。速力でも敏捷(びんしょう)性でも劣る二足歩行は、自由になった手で食物を運び、安全な場所で仲間との共食を導いて人類の生存を助けた。
人類が粗末なやりを使って狩…
- 【視点】
<言葉以外の手段を用いた共鳴社会の構築を目指すことが必要。個人の欲求や能力を高めることよりも、ともに生きることに重きを置く。> 教育現場を取材していて、いま最も強く感じることに一致します。グローバル教育だ、STEAM教育だ、などということ
…続きを読む