第3回講演に来た官邸の役人が… 中島岳志さんが語る報ステと放送法文書

有料記事放送法文書 何が問題なのか

聞き手・平賀拓史
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 安倍政権下で2014年から15年にかけて、礒崎陽輔首相補佐官総務省放送法に記された「政治的公平性」に関する説明を求めていた経緯が、今回総務省が公表した行政文書には記されていた。礒崎氏がTBSなどの番組名を挙げ、「総理が問題意識を持っている」などと発言していたと書かれている。文書の中に名が出てくる番組の一つ、テレビ朝日報道ステーション」で当時コメンテーターを務めていた、政治学者で東京工業大教授の中島岳志さん(48)は、官邸からの「視線」を感じたある出来事を明かす。(肩書はいずれも当時)

 放送局の番組編集について放送法が定める「政治的公平」。その解釈に追加を求め、安倍政権当時の礒崎陽輔首相補佐官が総務省とやりとりしていた経緯を記したとされる行政文書の存在が明らかになった。文書から見えてくる解釈追加の経緯や狙い、そして政治と放送の関係について、どんな問題があるのか。各界の識者に聞いた。

 ――15年春から1年間、週1回のレギュラーコメンテーターを務めました。その前年、衆院選を控えた14年11月には自民党が在京テレビ各社に「公平中立」を求める文書を送り、「報ステ」単体にも報道内容を批判し「公平中立な番組作成」を要請する文書を送ってくるなど、政治とメディアの関係が取りざたされていた時期です

 報ステには以前から3カ月に一度くらいの頻度でゲスト出演していましたが、15年の4月からレギュラーコメンテーターになりました。レギュラーを依頼されたのが3月2日で、突然のことだったのを覚えています。当時北海道大の准教授でしたから、「えっ、4月から毎週東京に通うの」と。こんな大きな改編をするなら年末くらいから調整が来ていてもおかしくないですし、現場がばたついている気がしました。

 14年度までは月曜から木曜まで朝日新聞記者がレギュラーコメンテーターを務めていたのですが、15年度からその枠が週1になった。朝日新聞の露出が減って、代わりに僕や(憲法学者で現東京都立大教授の)木村草太さんなどが入った。見ているほうからすると、トーンが変わったような印象はあったかもしれません。

高市氏答弁当時の印象は

 ――今回公表された文書をどう読みましたか

 こんなことがあったのか、と驚きました。

 15年5月に放送法の解釈を加えた高市早苗総務大臣の答弁に至る背景が明らかになりましたが、当時の印象はあまりなく、この件について番組でコメントしたこともなかったと思います。この年の国会の中心はやっぱり安全保障法制でしたから、そちらの方に意識が向いていました。

 放送法解釈を変えるよう迫ってくる礒崎氏の要求に対して、総務省が抵抗していたことも意外でした。この文書で明らかになったことを、前後の時間推移も含めて、トータルに検証すべきです。

中島さんは「報ステ」出演当時に経験した、官邸の「視線」を感じさせる出来事を振り返ります。

 このころのことですが、私の…

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この記事を書いた人
平賀拓史
文化部|論壇担当
専門・関心分野
歴史学、クラシック、ドイツ文化など
放送法めぐる総務省文書問題

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