第1回地球を想い、富野由悠季はガンダムをやめた 「今の子どもなら…」
地球資源の枯渇によって人類が宇宙に移住した時代を舞台にした「機動戦士ガンダム」。今もシリーズとして続く人気作品の生みの親であるアニメーション映画監督・原作者の富野由悠季さん(81)が、「ガンダムをやめた理由」も環境問題にあるそうです。
――機動戦士ガンダムシリーズで描かれた宇宙移民時代の背景は、資源枯渇など今の環境問題につながっていると感じていました。作品をつくる中で影響した部分はありますか。
機動戦士ガンダムでは、人口が増えすぎて、地球に住めなくなって宇宙移民というのが始まってしまった。そして宇宙移民者と地球居住者の対立構造。ただ、宇宙と地球の二つの勢力じゃなくて、地球は多民族の価値集合体でもある。それがガンダムでつくった宇宙戦争になっていったんですよね。
ガンダムの企画をつくり始めたのが1977年ぐらいで、発表は79年。だけど、その数年前の72年にローマクラブが「成長の限界」という考え方を打ち出してきている。そうした背景もあって、ガンダムは巨大ロボットものなんだけれども、戦隊的なものではなく、宇宙戦記ものにした。今までの巨大ロボットものって、敵が宇宙人だったけど、そんな感じではないものになったので、スポンサーの承諾がとれるかは心配でした。
――ローマクラブは世界の科学者の集まりで、「成長の限界」は地球の持続可能性に警鐘を鳴らしたことで、環境問題の歴史でも有名です。
実を言うと、ガンダムを作るまでは、このローマクラブの発表は一般のニュースとして知ってはいたんだけど、インテリの遊びだと思っていたんですよ。
でも、実際にガンダムをつくり始めて、宇宙移民っていうものを想定していったときに、人口増のカーブっていうものがわかってきて、これはあと50年もしたらやばくなるって構造がわかってきた。そうなれば、もう永遠のテーマにするしかないと思いましたね。
――永遠のテーマですか。
ローマクラブが指摘している通りで、人口増と食料生産、そしてエネルギーの問題がある。あのころ、石油とか石炭があと80年ぐらいで枯渇するぞといわれた。それが全部始まっちゃったというわけです。そういうことを考えた時に、このままだと絶対的に地球が限界値を超える。ガンダムの物語を作りながら僕の中で定着しちゃいました。
それから20年間、ガンダムを作ってきたけど、突破口っていうものは見つからず、ますます環境問題っていうのははっきりして時代とリンクしたというわけですね。
大嫌いだったSDGs
――昔と比べて環境問題の変化を感じますか。
地球というものは、かつて無限だと思われていたけど、地球がもう有限だってことがわかるようになってきた。
でも地球にとって適正な人類の数ってのは、例えばどのぐらいなのか誰か計算しているか。していないでしょ? ガンダム的に物を考えたら、もうそのぐらいの計算をしてもいいくらいの時代にまで来ているはずなのに。研究者も結局、自分の専門のところしか見ていなくて、有限な地球をどうしていくか誰も考えていないんですよ。
――国連が2015年に持続可能な開発目標(SDGs)という概念を発表し、環境問題でも使われています。行政も企業もこれを目標にして動こうとしていますが、富野さんはどう見ていますか。
SDGsのようなメッセージ…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら