記者コラム「多事奏論」 論説委員・田玉恵美
テレビをつけていると、ジャニーズ事務所のタレントが毎日のように目に入ってくる。
調べると、定期出演している番組は地上波の夜だけで週に30本を超える。昼の番組やゲスト出演する番組を含めればもっと多いだろう。テレビとジャニーズの蜜月ぶりがうかがい知れる。
そのせいなのか、ジャニー喜多川氏の性暴力疑惑に対する放送各局の反応がどうも怪しい。社長らは毎月開かれている定例の記者会見で一様に歯切れが悪い。
「性暴力は許されない」と当たり前の一般論を強調してみたり、「ジャニーズとの個別のやりとりについては答えない」と口ごもったり。
さらには「ジャニーズの対応を注視する」「推移を見守る」と、ひとごとのようなせりふを繰り返している。
被害を訴える声は続々と上がっているが、ジャニーズ事務所のこれまでの対応は、一般の企業ではとても許されないようなずさんなものだ。
会見すら開かず、批判を受けてようやく始めた外部の専門家による調査でも、被害の全容解明はやらないと最初から宣言した。いつまでに結果を出すのかもわからない。
英国の人気司会者ジミー・サビル氏の性暴力疑惑では、サビル氏の死後であっても、警察や独立調査委員会などによって詳細な検証が行われたのと対照的だ。
こんな状態なのに、ジャニーズのビジネスは何事もなかったかのようにこれまで通りに続いている。もちろんタレントに罪はないのだが、どうにも釈然としない。
放送局の経営幹部に聞くと、「私だって釈然としてませんよ。でもどうしようもなくて、嵐が過ぎ去るのを待っている」という。
ジャニー喜多川氏が存命で疑惑が真実だと認めていたり、警察が逮捕したりしているわけでもないので、身動きが取りづらい、ということらしい。
別の局の幹部は「(性暴力は)昔の話だと割り切っていいとはもちろん思っていないが、一緒に汗を流して番組を作ってきた歴史もありジレンマがある。ジャニーズがもっときちんと対応してくれればいいのだが……」。
さらに別の局では「広告主も動いていないし、視聴者も今まで通りタレントを見たい人のほうが多い。事実関係もわからないし、行動に出る理由がない」という幹部もいた。
たしかに一義的に責任を問われるのはジャニーズ事務所だし、放送局にとっては「よその会社」のことだろう。
とはいえ、チョコレート会社…
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