「うまくなることに興味がない」 絵本作家・荒井良二さんが続ける旅

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田中瞳子
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 手は動き続けるが、頭のなかに完成図はない。「俺が思いつくイメージなんて、すでに誰かが思いついている。だから常に動かし、流していく。何よりまず、自分の予想を裏切らなきゃ」

 1990年に絵本デビューして以来、100冊以上の本を手がけてきた。2005年には、世界的な児童文学賞であるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を日本人で初めて受賞。日本を代表する「絵本作家」と呼ばれるけれど、「俺は一回も名乗ってない。絵本作家は俺の活動のなかの一部だから。職業をここからここまで、と区切るのは、つらいよなあ」。

 今月、横須賀美術館神奈川県横須賀市)で開幕した大規模個展「new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった」では、キャリア初期のイラストから最新作のインスタレーションまで展示する。旅をするように、常に新たな表現を模索してきたこれまでの歩みが表れている。

 大学の美術学科を卒業後、運送会社や焼き鳥屋でアルバイトをしながら、いつか絵本を作りたいと思っていた。焼き鳥屋の常連客だった編集者から雑誌のカットを依頼してもらったことをきっかけに、フリーのイラストレーターとして雑誌や広告の仕事を数多く手がけるようになる。

 作詞作曲やバンド活動をしたり、「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」で芸術監督を務めたり。活動は絵を描くだけにとどまらない。「絵本の王道じゃなくて、絵本の周辺にいたい。そうじゃないと絵本が見えなくなってしまうから」

 成功や完璧には興味がない…

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