子どものアトピー治療、何が変わった? 医師に聞く新薬と最新の常識

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 子どもの10人に1人はアトピー性皮膚炎に悩んでいる。ここ数年、登場している新しい治療薬の多くは大人向けだが、子どもが使える薬も少しずつ増えている。子どものアトピー治療の現在地について、東京慈恵会医科大学皮膚科の石氏陽三さんに聞いた。

 ――アトピー性皮膚炎の新しい治療薬が、続々と登場しています。子どもたちの治療も、以前と変わったのでしょうか。

 アトピーの治療では、大人も子どもも、塗り薬による治療(外用療法)が基本という点は以前と変わらず、まずは保湿が基本です。スキンケアとして、保湿は1年を通してみなさんに続けてもらいます。

 ただ、アトピー性皮膚炎の方の肌は、健康そうに見えても皮膚の下で見えない炎症が続いているため、保湿剤だけだとすぐに再発してしまうという方もいます。保湿剤だけでコントロールできない場合は、ステロイドなどの塗り薬で炎症をしっかり抑えていく。この点も、従来と変わりません。

 ――では、何が変わったのでしょう?

 ステロイドと保湿剤の中間ぐらいの炎症を抑える効果が期待できる、ステロイドではない塗り薬の選択肢が増えています。

 具体的には、以前から使われていた免疫抑制剤の「プロトピック」(一般名タクロリムス)の他に、JAK阻害薬の「コレクチム」(同デルゴシチニブ)と、PDE4という炎症にかかわる酵素の働きを抑える「モイゼルト」(同ジファミラスト)という薬が最近、公的医療保険の対象になりました。コレクチムは生後6カ月から、モイゼルトは2歳から使えます。

新しい塗り薬、ステロイドとの違いは

 ――ステロイドと、どう違うのでしょう。

 ステロイドは、炎症に関わる「サイトカイン」というたんぱく質の働きを幅広く抑えてくれます。炎症やかゆみを抑える効果は非常に高いのですが、使いすぎると皮膚が薄くなったり、毛細血管が拡張したり、多毛になったりする副作用があります。子どもの場合はどうしても副作用が起こりやすいという悩みがありました。

 一方で、JAK阻害薬や、PDE4阻害薬は、かゆみや皮膚の炎症をひきおこす原因となる特定のサイトカインの働きを、ステロイドとは異なった方法で抑えます。炎症を抑える効果は弱いですが、長く安全に使うことができるという特徴があります。さらにステロイドと異なり、皮膚のバリアー機能を改善させる効果も期待できます。

 ――なるほど。どの段階でこうした薬を使うのでしょうか。

 実際の診察では、まず強めの…

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