「年収の壁」対策、働き控えに効果は? 専門家は評価「短期的には」
政府が経済対策の一環として、「年収の壁」問題への対応策を打ち出しました。壁による「働き控え」の解消につながるのでしょうか。社会保障に詳しい野村総合研究所の武田佳奈・エキスパート研究員に聞きました。
――政府が27日に打ち出した「支援強化パッケージ」をどう評価しますか。
「足元の急激な物価高に対応するための個人の所得アップや、企業の人手不足への対応という観点から、非常に効果が期待できると評価しています。新型コロナで途絶えていたインバウンドが再び増えるなどの中で人手不足が経済再生の足かせになっている現状が続いています。年収の壁による就業調整(働き控え)の問題は年末に向けてさらに深刻になると予想されます。その意味で今すぐに実行できる対策を打ったスピード感も評価できるポイントです」
――年収が106万円を超えても手取りが減らないようにする事業者向けの助成金のほか、130万円を超えても2年までは扶養から外れないようにする対策も盛り込まれました。
「『106万円』『130万円』の壁の手前で就業調整をしていた人が、壁を意識せずに可能な範囲まで働くことができて収入を増やせます。深刻な物価高の中で家計を助けることにつながります。我々の調査では『年収の壁』によって就業調整する人において、時給が上がって働く時間を短くせざるを得なかったというケースが多く見られました。『年収の壁』が時給アップの制約になっていた側面もあります。壁の解消は処遇の改善にもつながり、事業者にとっても継続的な雇用や新規の人材獲得につながるなどメリットは大きい」
不公平の指摘「理解できる。ただ…」
――対策を実施する上で課題はどういった点でしょうか。
「助成金の利用を希望する事…