校則の髪形規定、人種差別につながることも 「ハーフ」研究者の後悔
社会学者・下地ローレンス吉孝さん寄稿
髪を染めてはいけないのに黒髪への染髪を強要される、下着が白色であるかを教員に確認される――。学校の校則はこれまでたびたび社会問題として議論され、理不尽なルールに従うことの是非や、同調圧力の文化が指摘されてきました。しかし、「人種差別主義としての校則」という側面について語られることはこれまで少なかったのではないでしょうか。
「制度的人種差別」。日本ではまだこの言葉は耳慣れないかもしれません。しかし、例に漏れず日本社会においても、学校、会社、医療機関、公共の空間、街頭など、至る所に制度的人種差別の影響が及んでいます。例えば、名前にカタカナが入っていただけで就職説明会への参加を拒否されたり、肌の色を理由に警察官から頻繁に職務質問を受けたりすることが挙げられます。学校において黒髪ストレート以外の髪色・髪質・髪形を禁止する校則もその一つです。
世界的に見れば、2020年のBlack Lives Matter(以下、BLM)運動の盛り上がりの中で日本でも徐々に聞かれるようになってきた言葉です。同志社大学・南川文里教授は「アメリカ多文化社会論――『多からなる一』の系譜と現在」(法律文化社)の中で、制度的人種差別を以下のように説明しています。
「直接的で敵対的な暴力や言動だけでなく、人種差別の意図がなくても間接的に特定の人種集団の人々が不利になる社会の仕組み」
特にBLM運動の文脈では、警察官や移民関税執行局(ICE)、刑務所など権力を持つ機関が複数関与される状況の中で、黒人やラテン系の人々が不当に大量収容されていく米国の仕組みが制度的人種差別であると指摘されてきました。条文などに人種差別的な文言が明記されていなくとも、システムが運用されるなかで特定の人種的背景の人々が不利益を被るという状態です。
アフリカの伝統的な髪形が「校則違反」
今年9月7日。学校での髪質・髪形に基づいた差別の禁止を求める3万人超えの署名が文部科学省に提出されました。署名活動を行ったJapan for Black Livesに関わりのある研究者の一人として、私も会見に同席しました。
この署名活動は、同年3月に兵庫県姫路市の県立高校において男子生徒が卒業式に他の生徒から隔離され、卒業証書の際も返事をしないように指導された事件がきっかけで開始されたものです。
卒業生であるこの男子生徒は、髪を整える意味で自身のルーツでもあるアフリカの伝統的髪形(コーンロウ)にしたところ、校則の違反を理由に上記のような差別的対応をされたといいます。
署名呼びかけ団体であるJapan for Black Livesは文科省に対し、「差別的な行為の禁止や問題のある校則を見直すよう学校に通達する」「専門家による講習会等を定期的に実施する」「当事者や家族に真摯(しんし)に向き合った対応をする」ことなどを求めています。
日本では校則問題が後を絶ちません。髪形についても、生徒の生まれ持った髪色・髪質を否定し、黒髪ストレートを強要する校則が存在します。
日本とスイスにルーツのある佐々木リアムさん(仮名)が語った、高校時代の地毛証明書発行についての経験も紹介。下地さんのインタビューに対し、親を呼んだ学校側からは「あなたのお母さんが来た方がわかるから」と発言があったといいます。
学校によっては、地毛証明書…
- 【視点】
皆さんが応援したり、その活躍から元気をもらっているアスリートたちのなかに、差別やいじめに苦しんだ経験を持つ人はたくさんいます。ただ、彼らは「でも、今はたくさん応援してもらってますから」と多くを語らない人がほとんどです。バスケットボールや陸上
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