短くても存分に生きたさっちゃん こどもホスピス設立めざす母の思い

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小若理恵
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 ベッドの上で、もう声を出すこともできなくなったさっちゃんの唇がかすかに動いた。

 「だ・い・す・き」

 そのまま眠るようにして、翌朝、静かに息を引き取った。家族に見守られながら、大好きなママと手をつないで。

 愛知県江南市に生まれ育った安藤佐知さんは2021年5月19日、9歳の短い生涯を閉じた。白血病だった。

 最後の8日間。残された時間が長くないことを覚悟した両親は、さっちゃんを入院先の名古屋大病院から自宅に連れて帰った。さっちゃんは、家族との思い出が詰まった自宅で、在宅医療を受けながら過ごした。

 母、晃子さん(46)には、心に決めていたことがあった。自分たちのもとに生まれてきてくれた娘に、最後はありったけの「ありがとう」を伝えよう。

 「さっちゃん大好きだよ」

 亡くなる前日、そう声をかけた晃子さんに、さっちゃんは確かに口元を動かして応えた。

 2年半が経ち、晃子さんは思う。

 「最後に『大好き』って言ってくれたことが私の宝になり、生きる希望を与えてくれた」

再発がわかった時、さっちゃんが母にくれた手紙

 さっちゃんはどんな状況でも、前を向いて生きる子だった。病室から出られなくても、小さな楽しみを見つけ、声を上げて笑った。

 亡くなる8カ月前、再発が分…

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