第1回タイ語になったタコヤキ、オニギリ 「日本」は東南アジアの日常に

有料記事ルックサウスイースト 日本と東南アジアの半世紀

シンガポール=笠原真 バンコク=翁長忠雄
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 ルフィ、マイキー、炭治郎――。コスプレ姿の人々が行き交う。ステージから「残酷な天使のテーゼ」が聞こえ、最前列で男性らが曲にあわせて踊っている。

 ここは、秋葉原でも池袋でもない。11月のシンガポール。東南アジア最大のアニメ関連イベント、「アニメ・フェスティバル・アジア(AFA)2023」の会場だ。

ルックイースト。日本の成長をモデルに、かつてマレーシアで提唱された政策です。あれから40年。日本とともに歩み、友好協力50年を迎えた東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国で、記者が見た景色を伝えます。

 「呪術廻戦」のコスプレで来場したモンドさん(26)は、「日本アニメは没入感が圧倒的。キャラが表現力豊かで、心情に共感できる」。高校時代に「犬夜叉」にハマるまで、日本に関する知識は「ソニーって日本の会社だっけ」という程度だった。アニメを通して「ご飯、お寺、浴衣などを知り、日本という国に興味を持った」。

 AFAの主催者「SOZO」によると来場者の大半が10~20代。国籍はマレーシアやインドネシアフィリピンなど様々だ。ショーン・チン代表(50)は「AFAは手軽な日本の『ショーケース』だ」と話す。

 東南アジアで日本アニメが広がり始めたのは1980年代。「ドラえもん」がテレビ放送され、「機動戦士ガンダム」などの海賊版が出回った。チンさんもガンダムや「ドラゴンボール」を見て、「かっこよくてファッショナブルな印象を強烈に受けた」。その後インターネットの動画視聴が普及して一般化し、ファン同士の交流も生まれた。

 08年に始まったAFAの来場者数は、15年間で3万人から15万人規模に増えた。シンガポールの調査サイトYouGovの昨年3月の調べでは、大人の約52%が「アニメを見たことがある」と回答した。

 日本のサブカルチャーに詳しいシンガポール国立大のデボラ・シャムーン准教授(日本文学)は「日本作品はジャンルが多様で、子供から大人まで楽しめる」と言う。例えば西洋コミックは「ヒーローもの」が多いが、日本の作品はスポーツや歴史を題材にしたもの、悲しい結末の物語もある。「目を大きく誇張して描くような独特な視覚的効果も、読者の感情移入を誘うのでは」とみる。

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この記事を書いた人
笠原真
ヤンゴン支局長兼アジア総局
専門・関心分野
紛争、難民、格差
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    仲岡しゅん
    (弁護士)
    2023年12月12日21時0分 投稿
    【視点】

    以前から東南アジアの熱気と雑多な雰囲気が好きで、コロナ規制が明けてからも、タイ、フィリピン、ベトナムと渡航した。 大きめのショッピングセンターには今や必ずといっていいほど日本食レストランがあり、市場では日本のアニメのフィギュアがたくさん並

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