半世紀前の大阪万博 桶や樽、生活用具と大衆文化の集積が語るもの

有料記事多事奏論

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記者コラム 「多事奏論」 編集委員・長沢美津子

 古いものが、古くさいわけではない。

 昔ながらの桶(おけ)や樽(たる)を、作ったり使ったりする人たちの言葉は不思議と未来を感じさせて、ニュースの現場にいるようだった。そこが「人類の進歩と調和」をうたって53年後の大阪、千里の丘の万博記念公園なのも、めぐり合わせである。

 国立民族学博物館(民博)で進む森林利用史の共同研究、通称「桶樽研」を取材している。落合雪野・龍谷大教授(民族植物学)をリーダーに、多分野の研究者に加え、国内最後の大桶職人や桶作家、桶を使って酒やしょうゆ、ふなずしをつくる実務家も集まる。

 落合さんは「人は木をどのように使って、森林とどうつきあい、暮らしを成り立たせてきたか。身近なモノを手がかりに解き明かしたい」と話す。日本の木材自給率は約40%。手放してきた暮らしである。民博は国内のものだけで700点の桶樽を所蔵し、その樹種の特定から始める。木を知って、森が見えてくる。

 桶樽の何が魅力なのか。

 短冊状の板をぐるりと輪に並…

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