外国にルーツを持つ子の教育に求められていることは何か。学校現場では今、どのような課題があるのか。多くの外国ルーツの生徒を指導してきた都立町田高校定時制教諭の角田仁さん(61)に聞いた。
◇
名前をどう呼んでいいのか分からない
外国ルーツの生徒に向き合うようになったきっかけは、1990年代初め、30代の頃に勤務していた高校に台湾出身の女子生徒が入ってきたことでした。最初は名前をどう読んでいいのかすら分からず、それまでの経験が通用しないことに気づきました。
その後、2000年代にかけ、定員割れとなった都立高校の定時制に、外国ルーツの生徒が数多く入学するようになった。中国、ベトナム、フィリピンなど様々な国や地域から来た生徒で、日本語の壁で授業が理解できず、孤立して中退してしまう子が半数以上でした。学校側の受け入れ態勢も整っておらず、ボランティアや大学の支援を受けて日本語などを別教室で学ぶ授業や補習をするなど、指導方法を手探りしてきました。
国や自治体の施策が追いついていなかったこともあり、学校の管理職も積極的に対策を進めることはありませんでした。同僚の教員からは、高校は日本語学校ではない、といった反発もありました。
そんな経験で気づいたのは、受け入れる私たちが変わらなければならないということです。そこで日本人の生徒たちも対象にし、多文化共生のためのシチズンシップ授業を始めました。中国語など、生徒たちの母語の授業を採り入れたり、お互いにルーツについてインタビューをして将来の夢を語り合うようなアクティブラーニング型の授業をしたりしました。
多文化共生の教育は、私たち日本人にとっても極めて大切なものです。お互いが変容し、お互いが学び合う。海外に行かなくても、学校で外国ルーツの仲間が隣にいれば、貴重な体験になります。
日本社会にとっても豊かな存在に
外国ルーツの生徒の進路指導…