第4回疲れ、迷い、30歳機に大企業を退職 女性作家が人気作に映す「私」

有料記事私のスイッチ 人生の決断

群山=稲田清英
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 韓国の南西部、海に面した群山(クンサン)市。「市民の文化空間」と入り口に記された街中の書店に12月の平日の夜、地元の人らが集まってきた。

 作家のファン・ボルムさんとの交流イベント「ブックトーク」だ。韓国では書籍が2022年に出版された小説「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」を手にした人が目立つ。ファンさんにとって初の長編小説だ。

 会社を辞めた一人の女性が住宅街に開いた書店が舞台。社会的な評価が人生の「成功」の物差しに直結しがちな競争社会の韓国で、「生きる意味」や「幸せ」について悩みながら、自分なりの一歩を模索し、踏み出す人たちの人生が交錯する。韓国でベストセラーとなり、日本でも話題の小説だ。

 「癒やされた、温かい気持ちになったといった言葉を多くいただいた。驚いたし、ありがたかった」。読書好きの人々を前に、ファンさんは笑顔で続けた。

 「作家になりたいと、何年も1人で書き続けた自分の人生を励ましたいと思った。間違った道を歩んではいないんだと」

日本でも話題の作家となったファンさん。かつては韓国で「エリート」と見なされる、全く違う道を歩いていました。方向転換には葛藤があったといいます。

峠を越えた、先にあったもの

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 早くから、作家をめざしてい…

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