首相の岸田文雄が第2次安倍政権の時から訴えていたことの一つに、過度な官邸主導政治の是正がある。
当時首相だった安倍晋三に絡む森友・加計学園の問題が噴出していた2018年6月、自民党政調会長だった岸田は講演で「最近、官僚が萎縮している」と述べ、19年11月には「官邸における人事の一元化が進み、忖度(そんたく)なんて言葉が使われた。官僚組織がこのままで大丈夫か。国の持続可能性を考えないといけない」と踏み込んだ。首相就任後も「トップダウンとボトムアップを使いこなすのが『賢い政治』。適切な使い分けが公務員のやりがいにつながる」と繰り返す。
岸田が意識するのは「強すぎる官邸」の弊害だが、1980年代以降は「弱すぎる官邸」が問題視されていた。経済は右肩上がり、外交は米国に右倣えの冷戦期なら官僚任せで構わないが、国内外の情勢が複雑になると、省庁の「縦割り意識」がある官僚では対応できず、民意の裏付けのある政治家の速やかな決断が求められるようになる。
官邸機能の強化が差し迫った課題として捉えられた契機は、95年1月の阪神大震災だ。村山内閣の初動対応の遅れが指摘され、権力の中枢であるはずの首相官邸が各省の官僚を動かす力を持たない構造問題が浮き彫りになった。
社会党委員長だった村山富市から首相を継いだ自民党の橋本龍太郎は97年、省庁再編とともに首相の権限強化を打ち出す。各省庁の幹部人事は官房長官ら官邸幹部による閣議人事検討会議で審査するようにした。
「政治主導」の看板の下、政策決定の中枢から官僚を遠ざける3年3カ月の民主党政権をはさんで生まれた第2次安倍政権では、霞が関の幹部人事を一元化する内閣人事局が官邸に設けられ、官邸主導政治の「完成形」と評された。
この間、首相や官房長官に直結する「内閣官房」に勤める職員は増え続けた。
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「この人、どう思う」。各省が事前に上げてきた人事案について、官房長官だった菅義偉から頻繁に尋ねられたことを、菅側近の官僚が証言する。
首相の安倍から内政全般を任…
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