第3回買い物帰りに倒れた男性 関与拒んだ親族…納められない遺骨の行方は

有料記事身寄りなき最期と向きあう

土肥修一
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 1月半ば、東日本の海に近いお寺に、ある男性の遺骨が納骨された。83歳。亡くなってから、3カ月がすぎていた。

 納骨までの対応にあたった、地元の市の職員は「ご遺骨を、何とか納骨、供養することができて、よかったです」と振り返る。

 死後の手続きを担う身寄りがいない。遺骨を引き取ってくれる人がいない。

 永代供養を引き受けているこの寺に、最期にかかわることになった市職員が遺骨を納めるケースは、近年増えているという。

 今回納骨された男性が、路上に倒れているところを発見されたのは、2023年10月初めのことだった。

 通りかかった人が、救急車を呼んだ。近くにスーパーがあった。買い物帰りに倒れたようで、かばんにはカステラやアイスクリーム、ゆで卵と温泉卵が入っていた。

 見つかったときには心肺停止状態だった。搬送後、心臓は動き出した。ただ、意識は戻らず、人工呼吸器をつけることになった。

 身元はすぐにわかった。高齢者向けのバスの定期券を持っていた。

 一人暮らし。

 婚姻歴はなく、子どももいない。

 心臓に持病があった。病院が調べた結果、デイサービスやヘルパー派遣など介護保険サービスを利用しており、担当のケアマネジャーがわかった。男性の自宅近くに、いとこが住んでいることもわかった。

 医師のみたところ、意識不明の状態が数年続く可能性もある。所持していた現金は6千円ほど。長くなりそうな療養期間、これだけではすぐに治療費にも足らなくなる。

 病院からの相談を受け、市の福祉担当課の職員がケアマネをまじえ、いとこに対し、男性の身の回りの支援や金銭の管理などをしてもらえないか打診した。答えは「遠慮したい」。1年に一度会うかどうかで、互いの関係もよくなかったということだった。

 拒まれれば、強制はできない。

 市が調べると、ほかに、めいがいることもわかった。このめいは以前、たまたま別の親族の関係で市と連絡をとったことがあり、連絡先が記録に残っていた。とはいえ、住んでいるのは海外。欧州だった。支援してもらうには、あまりにも遠い。

 このままでは、どうにもならない。

 まずは、現金や通帳、負債が…

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2024年3月6日12時28分 投稿
    【視点】

    法制度が現状に追いついていないように思える。家族や親族の同意がどうしても取れない場合は、自治体などの第三者が処理できるようにしないと不都合が増えるばかりだろう。おそらくそういう検討も進んでいるのだと思うが、一刻も早く対応策が整備されることを

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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2024年3月6日14時36分 投稿
    【視点】

    亡くなった後に葬儀や遺骨の引き取りなどに関する親族への確認、調査をどの範囲までするのか。自治体職員の方の苦悩、苦労が伝わってきます。  この記事を読んで連想したのは、生活保護の扶養照会(仕送りの可否を親族に問い合わせること)のことです。

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