いま熱い小型ロケット競争 宇宙宅配便、世界100社が開発に躍起

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石倉徹也 玉木祥子
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 今、小型ロケットの開発競争が熱い。世界中のベンチャー企業が相次いで参入し、小回りのきくロケットの開発に躍起だ。「ニュースペース」と呼ばれ、ビジネスの舞台としても注目されてきた宇宙。だが、衛星を宇宙に打ち上げる「運び手」が足りていない。

宇宙ベンチャー「スペースワン」は、延期していた小型ロケット「カイロス」初号機を13日午前11時1分に打ち上げる予定です。人工衛星を軌道に投入できれば、民間として日本初の成果となるため注目されています。

 「使い勝手のいいロケットと専用の射場により、全世界に『宇宙宅配便』のサービスを提供するメドがたちました」

 ベンチャー企業「スペースワン」(東京都)の阿部耕三執行役員は1日の会見で、こう自信を見せた。開発したロケットが、和歌山県串本町から初めて打ち上がる予定だ。

 スペースワンが狙うのは、拡大する小型衛星の打ち上げ市場への参入だ。

「乗り合いバス」ではなく「タクシー」で宇宙へ

 衛星は、部品の高性能化によって、低コストで小型化が可能になり、打ち上げ需要は年々増加。2022年に打ち上げられた人工衛星などは世界で2368機。10年ほどで約11倍に増加した。

 大量の衛星で全世界をカバーして通信や観測を行う「コンステレーション」という衛星群も登場。高速インターネットサービス「スターリンク」を提供する米スペースXやワンウェブなど、米英中などの企業が今後数千~4万機の打ち上げを予定する。

 宇宙から撮影した画像で災害状況を把握したり、農業や環境対策に生かしたりするサービスも拡大している。

 昨年、過去最高の212回に達したロケット打ち上げ成功数は、10年前より2.7倍に増えた。2月に成功した日本の新型「H3」のように、全長50メートルを超える大型ロケットの開発が続くのも、右肩上がりの打ち上げ需要に応えるためだ。

 ただ、使いやすいロケットが足りていない。

 小型衛星は重さ100キロ前後と小さいため、大型ロケットに載せる時は、複数の衛星と一緒に搭載されることがほとんどだ。「相乗り」のため、最適な軌道に投入されなかったり、他の衛星の「開発待ち」が生じたりする不自由さが出てきてしまう。

 運賃は安いが、不便さもある「乗り合いバス」のような状態だ。

 そこで小回りのきく「タクシー」のように使える小型ロケットが熱望されている。

 自分たちの衛星の専用便となるため、待ち時間なく好きなタイミングで希望する軌道や高度に打ち上げられる。打ち上げ単価が高くても、衛星事業者にとってはメリットが大きいといい、開発するベンチャー企業は世界に約100社存在するとも言われる。

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この記事を書いた人
石倉徹也
科学みらい部
専門・関心分野
数学、物理、宇宙・天文