津波に消えた妻、子ども3人、両親 新たな家族に「パパ」と呼ばれて

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滝口信之
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 足を踏み入れるのは1年のうち一日だけと決めている。

 楽しかった思い出に、悲しい記憶が混じるから。

 「13年経ったけど、元気に暮らしているよ」

 かつて家族7人で暮らしていた福島県南相馬市原町区の自宅跡で、今田芳槙(よしまさ)さん(58)は11日午後2時46分、手を合わせて心の中で語りかけた。

 息子2人には「今頃、何の仕事していたかな」。妻には「もうすぐ還暦になるよ」。報告を終え、目頭を押さえた。

 あの激しい揺れの後、すぐに職場から帰宅した。自宅にいたのは両親と妻、2人の息子。年の離れた長女の祥子さん(当時10)だけが小学校にいて、「たぶん泣いているから」と妻に言われ、迎えに行った。

 自宅に全員がそろって一安心した。海までの約1キロに防災林があり、「津波はこないだろう」と考えた。

息子たちに叫んだ

 黒い煙を巻き上げる大きな波が隣家に迫るのに気づいたのは、父だった。全員で2階へ駆け上がろうとした時、父が波にのまれた。

 もっと上へ――。息子たちが…

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