第8回「人が裁くのだから冤罪は起こる」 日野町事件を追った元記者に聞く
1984年に発生した滋賀県日野町の強盗殺人事件(日野町事件)について、元毎日放送記者の里見繁・関西大名誉教授(72)は有罪判決の確定前から取材を続けてきた。冤罪(えんざい)をテーマに多くのドキュメンタリー番組も制作してきた。裁判所について「裁いているのは僕たちと同じ人間。間違い得るということを知ってほしい」と語る。
知らなかった取り調べの実態
――冤罪に関心を持ったきっかけは。
大阪府高槻市の選挙違反事件を取材し、91年に「全員無罪~147人の自白調書」という番組をつくりました。これが冤罪との出会いです。
86年の参院選をめぐり、大阪府警が元高槻市議を公職選挙法違反容疑で逮捕し、146人に略式命令が請求された事件。正式裁判を求めた135人のうち、死亡したり病気で裁判を欠席したりした人を除く122人全員に無罪が言い渡され、91年3月に確定した。自白の信用性が争点となり、大阪地裁は「各被告の自白は不自然に変遷し、相互に矛盾している」と結論づけた。
高槻に入り、20人くらいに話を聞いたと思います。でも、全員が事件について「根も葉もないことだ」と言うんです。
ではなぜ「自白」したのか。取材で聞いたのは、「脅された」「真夏に冷房のない部屋で10時間以上取り調べられた」といった証言でした。
大阪府警の捜査1課担当もしたのに、取り調べの実態をまったく知らなかったのです。「自白」って、取調室でつくられるフィクションみたいなところがあるんじゃないかと思いました。
初対面は「おっちょこちょいのおじいちゃん」
――日野町事件の取材を始めたのは、弁護団が上告審の対応に追われていた98年の暮れと著書にあります。
事件のことは、(冤罪事件の…
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- 【視点】
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