作家・池澤夏樹さんが見た「沖縄=2級の国土」という意識

有料記事「沖縄」を考える 代執行

聞き手・上地一姫
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 芥川賞作家の池澤夏樹さん(78)は今年、8年ぶりに名護市辺野古を訪ねました。かつて10年ほど沖縄で暮らした池澤さんは、自身と沖縄のかかわりについて「帰りそびれた観光客」であり、「勝手に特派員」と言います。政府が沖縄県知事の権限を奪う「代執行」という歴史的局面の後、池澤さんが現場に立って感じた思いを聞きました。

いけざわ・なつき 

北海道生まれ。『スティル・ライフ』で芥川賞。15年にわたり同賞選考委員。ギリシャや沖縄、フランスで暮らし、現在は長野県在住。小説、紀行、翻訳多数。23年には沖縄戦をテーマにした絵本「ヤギと少年、洞窟の中へ」を出版。

 いま見ておかなくてはいけない。そんな思いから8年ぶりに辺野古に行きました。国が沖縄県知事の権限を奪う代執行によって、新たに埋め立て工事を始めてから1カ月後、2月9日のことです。

 その日は雨でした。

 基地建設に反対し座り込みをする人たちを、機動隊員が排除していく。そこに1台、また1台とトラックがゲートの中に入っていく。その様子を見ながら、いったい誰に利がある工事なのかと考えました。

 完成まで12年かかるというが、軟弱地盤対策の難工事によって工期はさらに遅れるかもしれない。総工費は3500億円ほどから1兆円近くになったが、もっと膨らむのではないか。完成のころには、今工事を進めている政治家や官僚は引退し、だれも責任をとることはない。そもそも完成するかも疑わしい、と私は見ています。

あのとき、話題にものぼらなかった子どもたち

 もうかる人は少なくともいる。工事を請け負う大手ゼネコンやマリコン(海洋土木会社)には金が入る。めぐり巡って利を得る人がいる。

 普天間飛行場を東京に持って…

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この記事を書いた人
上地一姫
東京社会部
専門・関心分野
沖縄・平和

連載「沖縄」を考える 代執行

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