A-stories 8がけ社会と大災害(7)
能登半島地震の被害が大きかった奥能登2市2町は、地震前(2020年)に暮らしていた65歳以上の割合が48.9%と5割に迫り、15~64歳の人数を上回っていました。高齢化がさらに進み、社会を支える現役世代が減っていく「8がけ社会」のもとで、災害からの復興をどう考えるべきでしょうか。東日本大震災の被災地に長年携わり、「ミスター復興」と呼ばれた岡本全勝・元復興庁事務次官に聞きました。
――能登半島地震から3カ月が過ぎ、被災地では復興のあり方についての議論が始まっています。
被災者に要望を聞いたら「元通りにしてほしい」という声が出るでしょう。その思いに政治家や役人が「できません」とは、なかなか言えません。
東日本大震災がそうでした。行政が率先して「現状復旧」、さらには「以前より大きな街をつくる」と掲げた自治体もあります。それが13年経ったいま、災害公営住宅は建てたけど住民が年々減ってしまった集落や、大規模な土地整備をしたのに空き地が目立つ地域など課題が出ています。
連載「8がけ社会」
高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。そんな未来を先取りする能登半島での地震は、どんな課題や教訓を示しているのでしょうか。4月14日から配信する8本の記事では、8がけ社会と大災害に焦点をあて、災害への備えや復興のあり方を考えます。
人口減少下の地方で起きた東日本大震災
――住民が思い描いていた復興にならなかったのは、なぜでしょうか。
東日本大震災が、人口減少下の地方で起きた災害だからです。
戦後の災害復興は1959年の伊勢湾台風から始まり、「被災地を元通りにする」ことが哲学としてありました。当時は人口が増えていたので、集落の維持も可能でした。
その後、日本の人口は2008年から減少に転じ、地方では過疎、少子高齢化が進みました。災害が起きたら、都市部に移る人も出て、人口の流出は加速します。集落を元に戻しても、震災前の光景は戻らないのです。そう気づかされたのが、東日本大震災でした。
だからこそ、復興を議論する…