現場へ! 「公的な私文書」を生かす①
遺品を片づけていると、段ボール箱に文書がどっさり。とりわけ首相経験者や側近の遺族には悩ましい問題だ。戦後を見つめ直す上で第一級の史料があるかもしれないが、どう扱えばいいのか。
政府の文書ではない、そんな文書を私は「公的な私文書」と呼び、中身を報じてきた。今回は、その保存と公開を模索する人たちを訪ねる。
「公的な私文書」の一つが「宮沢喜一日録」。宮沢元首相が残した、大学ノート185冊に及ぶ40年間の政治行動記録だ。遺族から御厨(みくりや)貴・東京大学名誉教授が2015年に託され、朝日新聞と共同研究。「公的な私文書」をめぐる課題が取材で見えてきた。
日録の01年1月30日のページ。東京都内のホテルでの夜の会合に関し、「9月にSFで予定されている講演の件」との走り書きがある。01年9月は米サンフランシスコ(SF)での対日講和条約調印から50年。戦後の日米関係構築に貢献した宮沢氏は記念講演をした。それに向けた1回目の打ち合わせのことだ。
顔ぶれに「日本国際交流センター 山本正理事長」とある。山本氏は非政府・非営利で戦後外交を支え、宮沢氏とも親交があった。だが日録の記述はこの程度で、ともに故人。手がかりがないかと昨年11月、公益財団法人の同センター(JCIE)を訪ねた。
東京・赤坂のビルの一角に入…
- 【提案】
「公的な私文書」をどうするか。素晴らしい着眼点を持った特集です。私は大学院生からキャリアの序盤にあたる時期、山本さん(文中の山本正氏)のスタッフとして仕えておりましたので、彼の活動が戦後日本政治外交を記していくうえで、どれほど重要なのかよく
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