第2回円急落で官邸から「苦言」、日銀のジレンマ「全て満足させるの無理」

有料記事超円安時代

西村圭史 鬼原民幸 神山純一

超円安時代

歴史的な円安ドル高が続いている。家計の負担は膨らむ一方、輸出企業には過去最高益をもたらした。34年ぶりの円安水準は、私たちにとって、企業にとって、日本にとって、「恵み」か「災い」か。その功罪を解き明かす。

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 大型連休明けの5月7日夕、日本銀行植田和男総裁は、硬い表情で首相官邸に入っていった。向かい合ったのは岸田文雄首相。約30分にわたる面会を終え、植田氏は記者団の取材にこう答えた。

 「最近の円安については日本銀行の政策運営上、十分注視していく」。歴史的な円安が物価に与える影響に、強い警戒感をにじませた。

 首相から何を言われたのか。この問いには「いえ、一般的な経済・物価情勢に関する意見交換でございました」。

 だが、内実はそうではない。「十分に注視していく」との表現は、事前にすり合わせたものだった。

 きっかけは連休前の4月26…

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2024年6月12日7時0分 投稿
    【視点】

    「異次元緩和」の後始末。誰がやっても困難な仕事だが、政権のためではなく、日本(と世界)のために頑張っていただきたい。薄氷を踏む思いだろうが。

    …続きを読む
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    明石順平
    (弁護士・ブラック企業被害対策弁護団)
    2024年6月12日22時2分 投稿
    【解説】

    記事の冒頭、「34年ぶりの円安水準」とあるが、これは、名目レートだけを見た指摘である。 1990年でもっとも円安となった月は同年4月で、1ドル158.5円だった。 他方、直近2024年5月は1ドル156.21円である。 名目レートだけを見

    …続きを読む