5月中旬の真っ青な空の下、甘い香りがかすかに漂う。オーストラリア東部クイーンズランド州カブルチャーはイチゴの産地だ。農場では赤い実をつけた苗が水平線まで並ぶ。
ワーキングホリデー(ワーホリ)ビザを持つ、東京都出身の鈴木涼太さん(27)は市内のイチゴ農場で収穫や箱詰めなどの仕事をしている。肌は日に焼け、爪の間には土がたまっている。肩下まで伸ばしたロングヘアを「現地の人っぽくてかっこよくないですか?」とにかっと笑った。
自身のことを「ザ・出稼ぎ」と鈴木さんは表現する。
2021年12月に豪州に来てから、作物の収穫時期を迎える農場を探しては、渡り歩いてきた。韓国や台湾、欧米など様々な国・地域から来た人と、ズッキーニやラズベリーなどの収穫をした。「一番得意なのはイチゴ」と胸を張る。
働き手の成績表は1日当たりの収穫量だ。鈴木さんは午前6時から14時ごろまで働き、1日に800キロのイチゴを収穫する。約80人が働く職場ではトップクラスだ。
給料は1週間で1千豪ドル(約10万円)、多い時は1週間で2500豪ドル(約26万円)稼いだこともある。韓国人の現場責任者から「ロボットみたいによく働く」とからかわれる。
実家は約100年続く工務店だ。中学を卒業後、父通記(ゆきのり)さん(49)に弟子入りし、大工として腕を磨いてきた。
幼い頃、洋画で見た外国の風景に憧れて、「世界を見たい」と思ってきた。家族に「若いうちに行ってこい」と背中を押され、「外国で暮らしつつ、楽しくお金をためられたら」と、ワーホリビザでの豪州行きを決めた。
語学習得を目的にワーホリに来る日本人もいるが、鈴木さんの目的は外国暮らしをしながら、お金を稼ぐことだ。語学学校には通わなかった。
外国で休暇を満喫しつつ、働いて収入を得るワーホリ制度でオーストラリアに渡る若者が増えています。円安時代の出稼ぎ手段として活用する人も多い一方、職探しに苦労する人が続出しています。その理由とは。
仕事に「全フリ」、貯めたお金は
農作業の経験はゼロだったが…
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