第1回内田也哉子さんが語る谷川俊太郎さん 「読む人の心を照らす灯台」

有料記事谷川俊太郎さんとわたし

聞き手・田中瞳子
写真・図版
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 谷川俊太郎さんってどんな人? 誰もが存在を知っている。使う言葉はやさしいけれど、すべてをつかむのはそう簡単ではない。デビューから70年以上、読者を魅了し続けてきた詩人について、ともに作品を手がけたり、対談したりしてきた5人に聞きました。初回は文筆家の内田也哉子さんです。

 《25年ほど前に谷川俊太郎さんと対談をして以来、イベントや雑誌の企画でたびたび言葉を交わしてきた》

 谷川さんは、樹齢何百年という大木のようであり、ケープコッド(米・マサチューセッツ)の岬に立つ灯台のようでもある。25年ほど前からいままで、ものすごい荒波のなかにあっても一定のリズムで明かりをともしています。

 でも灯台のように動かないようでいて、内側はものすごいスピードで進化している。毎回新しいことに挑戦していて、漫然と出している作品がありません。

 谷川さんの詩は、何かを主張するのではなく、読む人の心の状況を反映させてしまう。心の深い場所で読者と通じ合ってしまっていると感じます。

 《出会いは、子供の頃に読んだ絵本を通してだった》

 谷川さんが訳した絵本「ジョゼットかべをあけてみみであるく」(ウージェーヌ・イヨネスコ作、エチエンヌ・ドゥレセール絵)を、子供の頃繰り返し読んでいました。1歳半から、英語を使う幼稚園に通っていた私が、初めて日本語の響きに親しんだ作品です。実家には、子供向けのおもちゃがほとんどなかった。ほんの数冊あった絵本のうちの一つでした。

 いま目に見えているものはあ…

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