津波危険とは「思いませんでした」 元福島第一原発所長、高裁で証言
東京電力福島第一原発事故につながった津波対策の不備。その責任を問う株主代表訴訟の控訴審で、事故の9カ月前まで第一原発の所長を務めていた小森明生・元常務(71)が初めて法廷で証言した。津波対策が必要になるとの説明は受けていたものの、危険な状態にあるとは「思わなかった」という。
「振り返ってみれば原子力に携わってきて、言葉に言い表せない被害を与えたことは、大変申し訳なく思っている」
19日、東京高裁の法廷に立った小森氏は、「申し訳ない気持ちはないのか」と原告側弁護士に問われて、こう語った。
一方で、津波対策をめぐる事故前の認識については「不十分とは考えていなかった」と述べ、当時の資料や発言については「記憶がない」と繰り返した。
小森氏は、事故時の所長だった吉田昌郎氏(故人)の前任者。2008年6月から福島第一原発所長を2年間務めた後、10年6月に常務取締役に就任した。
原発を運営する原子力・立地本部の副本部長を兼ねる技術系の役員で、11年3月の事故時は直後から記者会見に出席、事故収束の対応にあたった。
この裁判は、東電の株主が旧経営陣5人に対し、事故でかかった費用を会社に賠償するよう求めている。22年7月の一審・東京地裁判決は、勝俣恒久・元会長ら4人に13兆3210億円の賠償を命じ、その巨額さが話題を呼んだ。
被告のなかで唯一、賠償命令の対象から外れたのが小森氏だった。
津波対策を指示すべきだった取締役としての注意義務違反は認定されたものの、事故前年に就任してからでは対策が間に合わなかったと判断された。
小森氏の尋問は、健康上の理由から一審では見送られ、控訴審で実現した。直前まで福島第一原発のトップだった役員が、原発の安全性をどうとらえていたのかが注目された。
この日の尋問で焦点になった一つが、08年9月10日に福島第一原発で開かれた社内説明会だ。
「機微情報のため資料は回収、議事メモには記載しない」
説明会の議事メモには、こん…